ヨブ記

1章
1 ウツの地にヨブという名の人がいた。この人は潔白で正しく、神を恐れ、悪から遠ざかっていた。
2 彼には七人の息子と三人の娘が生まれた。
3 彼は羊七千頭、らくだ三千頭、牛五百くびき、雌ろば五百頭、それに非常に多くのしもべを持っていた。それでこの人は東の人々の中で一番の富豪であった。
4 彼の息子たちは互いに行き来し、それぞれ自分の日に、その家で祝宴を開き、人をやって彼らの三人の姉妹も招き、彼らといっしょに飲み食いするのを常としていた。
5 こうして祝宴の日が一巡すると、ヨブは彼らを呼び寄せ、聖別することにしていた。彼は翌朝早く、彼らひとりひとりのために、それぞれの全焼のいけにえをささげた。ヨブは、「私の息子たちが、あるいは罪を犯し、心の中で神をのろったかもしれない」と思ったからである。ヨブはいつもこのようにしていた。
6 ある日、神の子らが主の前に来て立ったとき、サタンも来てその中にいた。
7 主はサタンに仰せられた。「おまえはどこから来たのか。」サタンは主に答えて言った。「地を行き巡り、そこを歩き回って来ました。」
8 主はサタンに仰せられた。「おまえはわたしのしもべヨブに心を留めたか。彼のように潔白で正しく、神を恐れ、悪から遠ざかっている者はひとりも地上にはいないのだが。」
9 サタンは主に答えて言った。「ヨブはいたずらに神を恐れましょうか。
10 あなたは彼と、その家とそのすべての持ち物との回りに、垣を巡らしたではありませんか。あなたが彼の手のわざを祝福されたので、彼の家畜は地にふえ広がっています。
11 しかし、あなたの手を伸べ、彼のすべての持ち物を打ってください。彼はきっと、あなたに向かってのろうに違いありません。」
12 主はサタンに仰せられた。「では、彼のすべての持ち物をおまえの手に任せよう。ただ彼の身に手を伸ばしてはならない。」そこで、サタンは主の前から出て行った。
13 ある日、彼の息子、娘たちが、一番上の兄の家で食事をしたり、ぶどう酒を飲んだりしていたとき、
14 使いがヨブのところに来て言った。「牛が耕し、そのそばで、ろばが草を食べていましたが、
15 シェバ人が襲いかかり、これを奪い、若い者たちを剣の刃で打ち殺しました。私ひとりだけがのがれて、お知らせするのです。」
16 この者がまだ話している間に、他のひとりが来て言った。「神の火が天から下り、羊と若い者たちを焼き尽くしました。私ひとりだけがのがれて、お知らせするのです。」
17 この者がまだ話している間に、また他のひとりが来て言った。「カルデヤ人が三組になって、らくだを襲い、これを奪い、若い者たちを剣の刃で打ち殺しました。私ひとりだけがのがれて、お知らせするのです。」
18 この者がまだ話している間に、また他のひとりが来て言った。「あなたのご子息や娘さんたちは一番上のお兄さんの家で、食事をしたりぶどう酒を飲んだりしておられました。
19 そこへ荒野のほうから大風が吹いて来て、家の四隅を打ち、それがお若い方々の上に倒れたので、みなさまは死なれました。私ひとりだけがのがれて、あなたにお知らせするのです。」
20 このとき、ヨブは立ち上がり、その上着を引き裂き、頭をそり、地にひれ伏して礼拝し、
21 そして言った。
「私は裸で母の胎から出て来た。
また、裸で私はかしこに帰ろう。
主は与え、主は取られる。
主の御名はほむべきかな。」
22 ヨブはこのようになっても罪を犯さず、神に愚痴をこぼさなかった。

2章
1 ある日のこと、神の子らが主の前に来て立ったとき、サタンもいっしょに来て、主の前に立った。
2 主はサタンに仰せられた。「おまえはどこから来たのか。」サタンは主に答えて言った。「地を行き巡り、そこを歩き回って来ました。」
3 主はサタンに仰せられた。「おまえはわたしのしもべヨブに心を留めたか。彼のように潔白で正しく、神を恐れ、悪から遠ざかっている者はひとりも地上にはいない。彼はなお、自分の誠実を堅く保っている。おまえは、わたしをそそのかして、何の理由もないのに彼を滅ぼそうとしたが。」
4 サタンは主に答えて言った。「皮の代わりには皮をもってします。人は自分のいのちの代わりには、すべての持ち物を与えるものです。
5 しかし、今あなたの手を伸べ、彼の骨と肉とを打ってください。彼はきっと、あなたをのろうに違いありません。」
6 主はサタンに仰せられた。「では、彼をおまえの手に任せる。ただ彼のいのちには触れるな。」
7 サタンは主の前から出て行き、ヨブの足の裏から頭の頂まで、悪性の腫物で彼を打った。
8 ヨブは土器のかけらを取って自分の身をかき、また灰の中にすわった。
9 すると彼の妻が彼に言った。「それでもなお、あなたは自分の誠実を堅く保つのですか。神をのろって死になさい。」
10 しかし、彼は彼女に言った。「あなたは愚かな女が言うようなことを言っている。私たちは幸いを神から受けるのだから、わざわいをも受けなければならないではないか。」ヨブはこのようになっても、罪を犯すようなことを口にしなかった。
11 そのうちに、ヨブの三人の友は、ヨブに降りかかったこのすべてのわざわいのことを聞き、それぞれ自分の所からたずねて来た。すなわち、テマン人エリファズ、シュアハ人ビルダデ、ナアマ人ツォファルである。彼らはヨブに悔やみを言って慰めようと互いに打ち合わせて来た。
12 彼らは遠くから目を上げて彼を見たが、それがヨブであることが見分けられないほどだった。彼らは声をあげて泣き、おのおの、自分の上着を引き裂き、ちりを天に向かって投げ、自分の頭の上にまき散らした。
13 こうして、彼らは彼とともに七日七夜、地にすわっていたが、だれも一言も彼に話しかけなかった。彼の痛みがあまりにもひどいのを見たからである。

3章
1 その後、ヨブは口を開いて自分の生まれた日をのろった。
2 ヨブは声を出して言った。
3 私の生まれた日は滅びうせよ。
「男の子が胎に宿った」と言ったその夜も。
4 その日はやみになれ。
神もその日を顧みるな。
光もその上を照らすな。
5 やみと暗黒がこれを取り戻し、雲がこの上にとどまれ。
昼を暗くするものもそれをおびやかせ。
6 その夜は、暗やみがこれを奪い取るように。
これを年の日のうちで喜ばせるな。
月の数のうちにも入れるな。
7 ああ、その夜は、はらむことのないように。
その夜には喜びの声も起こらないように。
8 日をのろう者、レビヤタンを呼び起こせる者が
これをのろうように。
9 その夜明けの星は暗くなれ。
光を待ち望んでも、それはなく、暁のまぶたのあくのを見ることがないように。
10 それは、私の母の胎の戸が閉じられず、私の目から苦しみが隠されなかったからだ。

11 なぜ、私は、胎から出たとき、死ななかったのか。
なぜ、私は、生まれ出たとき、息絶えなかったのか。
12 なぜ、ひざが私を受けたのか。
なぜ、私の吸う乳房があったのか。
13 今ごろ、私は安らかに横になり、眠って休み、
14 自分たちのためにあの廃墟を築いた
この世の王たち、また議官たち、
15 あるいは黄金を持ち、自分の家を銀で満たした
首長たちといっしょにいたことであろうに。
16 それとも、私は、ひそかにおろされた流産の子のよう、光を見なかった嬰児のようでなかったのか。
17 かしこでは、悪者どもはいきりたつのをやめ、かしこでは、力のなえた者はいこい、
18 捕らわれ人も共に休み、追い使う者の声も聞かない。
19 かしこでは、下の者も上の者も同じで、奴隷も主人から解き放たれる。

20 なぜ、苦しむ者に光が与えられ、心の痛んだ者にいのちが与えられるのだろう。
21 死を待ち望んでも、死は来ない。
それを掘り求めても、隠された宝を掘り求めるのにすぎないとは。
22 彼らは墓を見つけると、なぜ、歓声をあげて喜び、楽しむのだろう。
23 神が囲いに閉じ込めて、自分の道が隠されている人に、なぜ、光が与えられるのだろう。

24 実に、私には食物の代わりに嘆きが来て、私のうめき声は水のようにあふれ出る。
25 私の最も恐れたものが、私を襲い、私のおびえたものが、私の身にふりかかったからだ。
26 私には安らぎもなく、休みもなく、いこいもなく、心はかき乱されている。

4章
1 すると、テマン人エリファズが話しかけて言った。
2 もし、だれかがあなたにあえて語りかけたら、あなたはそれに耐えられようか。
しかし、だれが黙っておられよう。
3 見よ。あなたは多くの人を訓戒し、弱った手を力づけた。
4 あなたのことばはつまずく者を起こし、くずおれるひざをしっかり立たせた。
5 だが、今これがあなたにふりかかると、あなたは、これに耐えられない。
これがあなたを打つと、あなたはおびえている。
6 あなたが神を恐れていることは
あなたの確信ではないか。
あなたの望みは
あなたの潔白な行いではないか。
7 さあ思い出せ。
だれか罪がないのに滅びた者があるか。
どこに正しい人で絶たれた者があるか。
8 私の見るところでは、不幸を耕し、害毒を蒔く者が、それを刈り取るのだ。
9 彼らは神のいぶきによって滅び、その怒りの息によって消えうせる。
10 獅子のほえる声、たける獅子の声は共にやみ、若い獅子のきばも砕かれる。
11 雄獅子は獲物がなくて滅び、雌獅子の子らは散らされる。

12 一つのことばが私に忍び寄り、そのささやきが私の耳を捕らえた。
13 夜の幻で思い乱れ、深い眠りが人々を襲うとき、
14 恐れとおののきが私にふりかかり、私の骨々は、わなないた。
15 そのとき、一つの霊が私の顔の上を通り過ぎ、私の身の毛がよだった。
16 それは立ち止まったが、私はその顔だちを見分けることができなかった。
しかし、その姿は、私の目の前にあった。
静寂…、そして私は一つの声を聞いた。
17 人は神の前に正しくありえようか。
人はその造り主の前にきよくありえようか。
18 見よ。神はご自分のしもべさえ信頼せず、その御使いたちにさえ誤りを認められる。
19 まして、ちりの中に土台を据える泥の家に住む者は
なおさらのことである。
彼らはしみのようにたやすく押しつぶされ、
20 彼らは朝から夕方までに打ち砕かれ、永遠に滅ぼされて、だれも顧みない。
21 彼らの幕屋の綱も
彼らのうちから取り去られないであろうか。
彼らは知恵がないために死ぬ。

5章
1 さあ、呼んでみよ。
だれかあなたに答える者があるか。
聖者のうちのだれに
あなたは向かって行こうとするのか。
2 憤りは愚か者を殺し、ねたみはあさはかな者を死なせる。
3 私は愚か者が根を張るのを見た。
しかし、その住みかは、たちまち腐った。
4 その子たちは危険にさらされ、門で押しつぶされても、彼らを救い出す者もいない。
5 彼の刈り入れる物は飢えた人が食べ、いばらの中からさえこれを奪う。
渇いた者が彼らの富をあえぎ求める。
6 なぜなら、不幸はちりから出て来ず、苦しみは土から芽を出さないからだ。
7 人は生まれると苦しみに会う。
火花が上に飛ぶように。

8 私なら、神に尋ね、私のことを神に訴えよう。
9 神は大いなる事をなして測り知れず、その奇しいみわざは数えきれない。
10 神は地の上に雨を降らし、野の面に水を送る。
11 神は低い者を高く上げ、悲しむ者を引き上げて救う。
12 神は悪賢い者のたくらみを打ちこわす。
それで彼らの手は、何の効果ももたらさない。
13 神は知恵のある者を
彼ら自身の悪知恵を使って捕らえる。
彼らのずるいはかりごとはくつがえされる。
14 彼らは昼間にやみに会い、真昼に、夜のように手さぐりする。
15 神は貧しい者を剣から、彼らの口から、強い者の手から救われる。
16 こうして寄るべのない者は望みを持ち、不正はその口をつぐむ。

17 ああ、幸いなことよ。神に責められるその人は。
だから全能者の懲らしめを
ないがしろにしてはならない。
18 神は傷つけるが、それを包み、打ち砕くが、その手でいやしてくださるからだ。
19 神は六つの苦しみから、あなたを救い出し、七つ目のわざわいはあなたに触れない。
20 ききんのときには死からあなたを救い、戦いのときにも剣の力からあなたを救う。
21 舌でむち打たれるときも、あなたは隠され、破壊の来るときにも、あなたはそれを恐れない。
22 あなたは破壊とききんとをあざ笑い、地の獣をも恐れない。
23 野の石とあなたは契りを結び、野の獣はあなたと和らぐからだ。
24 あなたは自分の天幕が安全であるのを知り、あなたの牧場を見回っても何も失っていない。
25 あなたは自分の子孫が多くなり、あなたのすえが地の草のようになるのを知ろう。
26 あなたは長寿を全うして墓に入ろう。
あたかも麦束がその時期に収められるように。
27 さあ、私たちが調べ上げたことはこのとおりだ。
これを聞き、あなた自身でこれを知れ。

6章
1 ヨブは答えて言った。
2 ああ、私の苦悶の重さが量られ、私の災害も共にはかりにかけられたら。
3 それは、きっと海の砂よりも重かろう。
だから、私のことばが激しかったのだ。
4 全能者の矢が私に刺さり、私のたましいがその毒を飲み、神の脅かしが私に備えられている。
5 野ろばは若草の上で鳴くだろうか。
牛は飼葉の上でうなるだろうか。
6 味のない物は塩がなくて食べられようか。
卵のしろみに味があろうか。
7 私はそんなものに触れるまい。
それは私には腐った食物のようだ。

8 ああ、私の願いがかなえられ、私の望むものを神が与えてくださるとよいのに。
9 私を砕き、御手を伸ばして私を絶つことが
神のおぼしめしであるなら、
10 私はなおも、それに慰めを得、容赦ない苦痛の中でも、こおどりして喜ぼう。
私は聖なる方のことばを
拒んだことがないからだ。
11 私にどんな力があるからといって、私は待たなければならないのか。
私にどんな終わりがあるからといって、私は耐え忍ばなければならないのか。
12 私の力は石の力であろうか。
私の肉は青銅であろうか。
13 私のうちには、何の助けもないではないか。
すぐれた知性も
私から追い散らされているではないか。

14 落胆している者には、その友から友情を。
さもないと、彼は全能者への恐れを捨てるだろう。
15 私の兄弟たちは川のように裏切った。
流れている川筋の流れのように。
16 氷で黒ずみ、雪がその上を隠している。
17 炎天のころになると、それはなくなり、暑くなると、その所から消える。
18 隊商はその道を変え、荒地に行って、滅びる。
19 テマの隊商はこれを目当てとし、シェバの旅人はこれに期待をかける。
20 彼らはこれにたよったために恥を見、そこまで来て、はずかしめを受ける。

21 今あなたがたは、そのようになった。
あなたがたは恐ろしいことを見ておびえている。
22 私が言ったことがあるか。
「私に与えよ」とか、「あなたがたの持ち物の中から、私のために贈り物をせよ」と。
23 あるいは「敵の手から私を救い出せ。
横暴な者の手から私を贖え」と。
24 私に教えよ。そうすれば、私は黙ろう。
私がどんなあやまちを犯したか、私に悟らせよ。
25 まっすぐなことばはなんと痛いことか。
あなたがたは何を責めたてているのか。
26 あなたがたはことばで私を責めるつもりか。
絶望した者のことばは風のようだ。
27 あなたがたはみなしごをくじ引きにし、自分の友さえ売りに出す。

28 今、思い切って私のほうを向いてくれ。
あなたがたの顔に向かって、私は決してまやかしを言わない。
29 どうか、思い直してくれ。
不正があってはならない。
もう一度、思い返してくれ。
私の正しい訴えを。
30 私の舌に不正があるだろうか。
私の口はわざわいをわきまえないだろうか。

7章
1 地上の人には苦役があるではないか。
その日々は日雇い人の日々のようではないか。
2 日陰をあえぎ求める奴隷のように、賃金を待ち望む日雇い人のように、
3 私にはむなしい月々が割り当てられ、苦しみの夜が定められている。
4 横たわるとき、私は言う。
「私はいつ起きられるだろうか」と。
夜は長く、私は暁まで寝返りをうち続ける。
5 私の肉はうじと土くれをまとい、私の皮は固まっては、またくずれる。
6 私の日々は機の杼よりも速く、望みもなく過ぎ去る。

7 思い出してください。
私のいのちはただの息であることを。
私の目は再び幸いを見ないでしょう。
8 私を見る者の目は、私を認めることができないでしょう。
あなたの目が私に向けられても、私はもういません。
9 雲が消え去ってしまうように、よみに下る者は、もう上って来ないでしょう。
10 彼はもう自分の家に帰らず、彼の家も、もう彼を認めないでしょう。

11 それゆえ、私も自分の口を制することをせず、私の霊の苦しみの中から語り、私のたましいの苦悩の中から嘆きます。
12 私は海でしょうか、海の巨獣でしょうか、あなたが私の上に見張りを置かれるとは。
13 「私のふしどが私を慰め、私の寝床が私の嘆きを軽くする」と私が言うと、
14 あなたは夢で私をおののかせ、幻によって私をおびえさせます。
15 それで私のたましいは、むしろ窒息を選び、私の骨よりも死を選びます。
16 私はいのちをいといます。
私はいつまでも生きたくありません。
私にかまわないでください。
私の日々はむなしいものです。
17 人とは何者なのでしょう。あなたがこれを尊び、これに御心を留められるとは。
18 また、朝ごとにこれを訪れ、そのつどこれをためされるとは。
19 いつまで、あなたは私から目をそらされないのですか。
つばをのみこむ間も、私を捨てておかれないのですか。
20 私が罪を犯したといっても、人を見張るあなたに、私は何ができましょう。
なぜ、私をあなたの的とされるのですか。
私が重荷を負わなければならないのですか。
21 どうして、あなたは私のそむきの罪を赦さず、私の不義を除かれないのですか。
今、私はちりの中に横たわります。
あなたが私を捜されても、私はもうおりません。

8章
1 シュアハ人ビルダデが答えて言った。
2 いつまであなたはこのようなことを語るのか。
あなたが口にすることばは激しい風のようだ。
3 神は公義を曲げるだろうか。
全能者は義を曲げるだろうか。
4 もし、あなたの子らが神に罪を犯し、神が彼らを
そのそむきの罪の手中に送り込まれたのなら、
5 もし、あなたが、熱心に神に求め、全能者にあわれみを請うなら、
6 もし、あなたが純粋で正しいなら、まことに神は今すぐあなたのために起き上がり、あなたの義の住まいを回復される。
7 あなたの始めは小さくても、その終わりは、はなはだ大きくなる。

8 さあ、先代の人に尋ねよ。
その先祖たちの探究したことを確かめよ。
9 私たちは、きのう生まれた者で、何も知らず、私たちの地上にある日は影だからである。
10 彼らはあなたに教え、あなたに語りかけ、その心からことばを出さないだろうか。

11 パピルスは沼地でなくても育つだろうか。
葦は水がなくても伸びるだろうか。
12 これは、まだ若芽のときには刈られないのに、ほかの草に先立って枯れる。
13 すべて神を忘れる者の道はこのようだ。
神を敬わない者の望みは消えうせる。
14 その確信は、くもの糸、その信頼は、くもの巣だ。
15 彼が自分の家に寄りかかると、家はそれに耐えきれない。
これにすがりつくと、それはもちこたえない。
16 彼が日に当たって青々と茂り、その若枝は庭に生えいで、
17 その根は石くれの山にからまり、それが岩間に生えても、
18 神がもし、その場所からそれを取り除くと、その場所は
「私はあなたを見たことがない」と否む。
19 見よ。これが彼の道の喜びである。
ほかのものがその地から芽を出そう。

20 見よ。神は潔白な人を退けない。
悪を行う者の手を取らない。
21 ついには、神は笑いをあなたの口に満たし、喜びの叫びをあなたのくちびるに満たす。
22 あなたを憎む者は恥を見、悪者どもの天幕は、なくなってしまう。

9章
1 ヨブは答えて言った。
2 まことに、そのとおりであることを私は知っている。
しかし、どうして人は自分の正しさを
神に訴えることができようか。
3 たとい神と言い争おうと思っても、千に一つも答えられまい。
4 神は心に知恵のある方、力の強い方。
神に身をこわくして、だれがそのままで済むだろうか。
5 神が山々を移されるが、だれもこれに気づかない。
神は怒ってこれをくつがえされる。
6 神が地をその基から震わすと、その柱は揺れ動く。
7 神が太陽に命じると、それは上らない。
星もまた封じ込められる。
8 神はただひとりで天を張り延ばし、海の大波を踏まれる。
9 神は牡牛座、オリオン座、すばる座、それに、南の天の室を造られた。
10 神は大いなることを行って測り知れず、その奇しいみわざは数えきれない。
11 たとい神が私のそばを通り過ぎても、私には見えない。
神が進んで行っても、私は認めることができない。
12 ああ、神が奪い取ろうとするとき、だれがそれを引き止めることができようか。
だれが神に向かって、「何をされるのか」と言いえよう。

13 神は怒りを翻さない。
ラハブを助ける者たちは、みもとに身をかがめる。
14 いったい、この私が神に答えられようか。
私が神とことばを交せようか。
15 たとい、私が正しくても、神に答えることはできない。
私をさばく方にあわれみを請うだけだ。
16 たとい、私が呼び、私に答えてくださったとしても、神が私の声に耳を傾けられたとは、信じられない。
17 神はあらしをもって私を打ち砕き、理由もないのに、私の傷を増し加え、
18 私に息もつかせず、私を苦しみで満たしておられる。
19 もし、力について言えば、見よ、神は力強い。
もし、さばきについて言えば、だれが私を呼び出すことができるか。
20 たとい私が正しくても、私自身の口が私を罪ある者とし、たとい私が潔白でも、神は私を曲がった者とされる。

21 私は潔白だ。
しかし、私には自分自身がわからない。
私は自分のいのちをいとう。
22 みな同じことだ。だから私は言う。
神は、潔白な者をも悪者をも
共に絶ち滅ぼされる。
23 にわか水が突然出て人を殺すと、神は罪のない者の受ける試練をあざける。
24 地は悪者の手にゆだねられ、神はそのさばきつかさらの顔をおおう。
もし、神がそうするのでなければ、そうするのはだれか。
25 私の日々は飛脚よりも速い。
それは飛び去って、しあわせを見ない。
26 それは葦の舟のように通り過ぎ、獲物に襲いかかる鷲のように通り過ぎる。

27 たとい「不平を忘れ、憂うつな顔を捨てて、明るくなりたい」と私が言いましても、
28 私の受けたすべての苦痛を思うと、私はおびえます。
私は知っています。
あなたは、私を罪のない者とは
してくださいません。
29 私はきっと、罪ある者とされましょう。
ではなぜ、私はいたずらに労するのでしょうか。
30 たとい私が雪の水で身を洗っても、灰汁で私の手をきよめても、
31 あなたは私を墓の穴に突き落とし、私の着物は私を忌みきらいます。

32 神は私のように人間ではないから、私は「さあ、さばきの座にいっしょに行こう」
と申し入れることはできない。
33 私たちふたりの上に手を置く仲裁者が
私たちの間にはいない。
34 神がその杖を私から取り去られるように。
その恐ろしさで私をおびえさせないように。
35 そうすれば、私は語りかけ、神を恐れまい。
いま私はそうではないからだ。

10章
1 私は自分のいのちをいとう。
私は自分の不平をぶちまけ、私のたましいの苦しみを語ろう。
2 私は神に言おう。
「私を罪ある者となさらないように。
なぜ私と争われるかを、知らせてください。
3 あなたが人をしいたげ、御手のわざをさげすみ、悪者のはかりごとに光を添えることは
良いことでしょうか。
4 あなたは肉の目を持っておられるのですか。
あるいは、人間が見るように、あなたも見られるのですか。
5 あなたの日々は人間の日々と同じですか。
あるいは、あなたの年は人の年と同じですか。
6 それで、あなたは私の咎を捜し、私の罪を探られるのですか。
7 あなたは、私に罪のないことを知っておられ、だれもあなたの手から
救い出せる者はいないのに。
8 あなたの御手は私を形造り、造られました。
それなのにあなたは私を滅ぼそうとされます。
9 思い出してください。
あなたは私を粘土で造られました。
あなたは、私をちりに帰そうとされるのですか。
10 あなたは私を乳のように注ぎ出し、チーズのように固め、
11 皮と肉とを私に着せ、骨と筋とで私を編まれたではありませんか。
12 あなたはいのちと恵みとを私に与え、私を顧みて私の霊を守られました。
13 しかし、あなたはこれらのことを
御心に秘めておられました。
私はこのことがあなたのうちにあるのを
知っています。
14 もし、私が罪を犯すと、あなたは私を待ちもうけておられ、私の咎を見のがされません。
15 もし、私が罪ある者とされるのなら、ああ、悲しいことです。
私は、正しくても、私の頭をもたげることはできません。
自分の恥に飽き飽きし、私の悩みを見ていますから。
16 私の頭が上がると、あなたはたける獅子のように、私を駆り立て、再び私に驚くべき力をふるわれるでしょう。
17 あなたは私の前に
あなたの新しい証人たちを立て、私に向かってあなたの怒りを増し、私をいよいよ苦しめられるでしょう。

18 なぜ、あなたは
私を母の胎から出されたのですか。
私が息絶えていたら、だれにも見られなかったでしょうに。
19 私が生まれて来なかったかのように、母の胎から墓に運び去られていたら
よかったものを。
20 私の生きる日はいくばくもないのですか。
それではやめてください。
私にかまわないでください。
私はわずかでも明るくなりたいのです。
21 私が、再び帰らぬところ、やみと死の陰の地に行く前に。
22 そこは暗やみのように真っ暗な地、死の陰があり、秩序がなく、光も暗やみのようです。」

11章
1 ナアマ人ツォファルが答えて言った。
2 ことば数が多ければ、言い返しがないであろうか。
舌の人が義とされるのだろうか。
3 あなたのおしゃべりは人を黙らせる。
あなたはあざけるが、だれもあなたを恥じさせる者がない。
4 あなたは言う。
「私の主張は純粋だ。
あなたの目にも、きよい」と。
5 ああ、神がもし語りかけ、あなたに向かって
くちびるを開いてくださったなら、
6 神は知恵の奥義をあなたに告げ、すぐれた知性を倍にしてくださるものを。
知れ。神はあなたのために、あなたの罪を忘れてくださることを。

7 あなたは神の深さを見抜くことができようか。
全能者の極限を見つけることができようか。
8 それは天よりも高い。あなたに何ができよう。
それはよみよりも深い。あなたが何を知りえよう。
9 それを計れば、地よりも長く、海よりも広い。
10 もし、神が通り過ぎ、あるいは閉じ込め、あるいは呼び集めるなら、だれがそれを引き止めえようか。
11 神は不信実な者どもを知っておられる。
神はその悪意を見て、これに気がつかないであろうか。
12 無知な人間も賢くなり、野ろばの子も、人として生まれる。
13 もし、あなたが心を定め、あなたの手を神に向かって差し伸べるなら、
14 ――あなたの手に悪があれば、それを捨て、あなたの天幕に不正を住まわせるな――
15 そうすれば、あなたは必ず、汚れのないあなたの顔を上げることができ、堅く立って恐れることがない。
16 こうしてあなたは労苦を忘れ、流れ去った水のように、これを思い出そう。
17 あなたの一生は真昼よりも輝き、暗くても、それは朝のようになる。
18 望みがあるので、あなたは安らぎ、あなたは守られて、安らかに休む。
19 あなたが横たわっても、だれもあなたを脅かさない。
多くの者があなたの好意を求める。
20 しかし悪者どもの目は衰え果て、彼らは逃げ場を失う。
彼らの望みは、あえぐ息に等しい。

12章
1 そこでヨブが答えて言った。
2 確かにあなたがたは人だ。
あなたがたが死ぬと、知恵も共に死ぬ。
3 私にも、あなたがたと同様に、悟りがある。
私はあなたがたに劣らない。
だれかこれくらいのことを
知らない者があろうか。
4 私は、神を呼び、神が答えてくださった者であるのに、私は自分の友の物笑いとなっている。
潔白で正しい者が物笑いとなっている。
5 安らかだと思っている者は
衰えている者をさげすみ、足のよろめく者を押し倒す。
6 荒らす者の天幕は栄え、神を怒らせる者は安らかである。
神がご自分の手でそうさせる者は。

7 しかし、獣に尋ねてみよ。
それがあなたに教えるだろう。
空の鳥に尋ねてみよ。
それがあなたに告げるだろう。
8 あるいは地に話しかけよ。
それがあなたに教えるだろう。
海の魚もあなたに語るだろう。
9 これらすべてのもののうち、主の御手がこれをなさったことを、知らないものがあろうか。
10 すべての生き物のいのちと、すべての人間の息とは、その御手のうちにある。
11 口が食物の味を知るように、耳はことばを聞き分けないだろうか。
12 老いた者に知恵があり、年のたけた者に英知があるのか。
13 知恵と力とは神とともにあり、思慮と英知も神のものだ。
14 見よ。神が打ちこわすと、それは二度と建て直せない。
人を閉じ込めると、それはあけられない。
15 見よ。神が水を引き止めると、それはかれ、水を送ると、地をくつがえす。
16 力とすぐれた知性とは神とともにあり、あやまって罪を犯す者も、迷わす者も、神のものだ。
17 神は議官たちをはだしで連れて行き、さばきつかさたちを愚かにし、
18 王たちの帯を解き、その腰に腰布を巻きつけ、
19 祭司たちをはだしで連れて行き、勢力ある者を滅ぼす。
20 神は信頼されている者の弁舌を取り除き、長老たちの分別を取り去り、
21 君主たちをさげすみ、力ある者たちの腰帯を解き、
22 やみの中から秘密をあらわし、暗黒を光に引き出す。
23 神は国々を富ませ、また、これを滅ぼし、国々を広げ、また、これを連れ去り、
24 この国の民のかしらたちの悟りを取り除き、彼らを道のない荒地にさまよわせる。
25 彼らは光のない所、やみに手さぐりする。
神は彼らを酔いどれのように、よろけさせる。

13章
1 見よ。私の目はこれをことごとく見た。
私の耳はこれを聞いて悟った。
2 あなたがたの知っていることは
私も知っている。
私はあなたがたに劣っていない。
3 だが、私は全能者に語りかけ、神と論じ合ってみたい。
4 しかし、あなたがたは偽りをでっちあげる者、あなたがたはみな、能なしの医者だ。
5 ああ、あなたがたが全く黙っていたら、それがあなたがたの知恵であったろうに。
6 さあ、私の論ずるところを聞き、私のくちびるの訴えに耳を貸せ。
7 あなたがたは神の代わりに、なんと、不正を言うのか。
神の代わりに、欺きを語るのか。
8 神の顔を、あなたがたは立てるつもりなのか。
神の代わりに言い争うのか。
9 神があなたがたを調べても、大丈夫か。
あなたがたは、人が人を欺くように、神を欺こうとするのか。
10 もし、あなたがたが隠れて
自分の顔を立てようとするなら、神は必ずあなたがたを責める。
11 神の威厳は
あなたがたを震え上がらせないだろうか。
その恐れがあなたがたを襲わないだろうか。
12 あなたがたの格言は灰のことわざだ。
あなたがたの盾は粘土の盾だ。
13 黙れ。私にかかわり合うな。
この私が話そう。
何が私にふりかかってもかまわない。
14 それゆえ、私は自分の肉を自分の歯にのせ、私のいのちを私の手に置こう。
15 見よ。神が私を殺しても、私は神を待ち望み、なおも、私の道を神の前に主張しよう。
16 神もまた、私の救いとなってくださる。
神を敬わない者は、神の前に出ることができないからだ。
17 あなたがたは私の言い分をよく聞け。
私の述べることをあなたがたの耳に入れよ。
18 今、私は訴えを並べたてる。
私が義とされることを私は知っている。
19 私と論争する者はいったいだれだ。
もしあれば、そのとき、私は黙って息絶えよう。

20 ただ二つの事を私にしないでください。
そうすれば、私は御顔を避けて隠れません。
21 あなたの手を私の上から遠ざけてください。
あなたの恐ろしさで
私をおびえさせないでください。
22 呼んでください。私は答えます。
あるいは、私に言わせ、あなたが私に答えてください。
23 私の不義と罪とはどれほどでしょうか。
私のそむきの罪と咎とを私に知らせてください。
24 なぜ、あなたは御顔を隠し、私をあなたの敵とみなされるのですか。
25 あなたは吹き散らされた木の葉をおどし、かわいたわらを追われるのですか。
26 実にあなたは私に対してひどい宣告を書きたて、私の若い時の咎を
私に受け継がせようとされます。
27 あなたは私の足にかせをはめ、私の歩く小道をことごとく見張り、私の足跡にしるしをつけられます。
28 そのような者は、腐った物のように朽ち、しみが食い尽くす着物のようになります。

14章
1 女から生まれた人間は、日が短く、心がかき乱されることでいっぱいです。
2 花のように咲き出ては切り取られ、影のように飛び去ってとどまりません。
3 あなたはこのような者にさえ、あなたの目を開き、私をご自身とともに、さばきの座に連れて行かれるのですか。
4 だれが、きよい物を汚れた物から出せましょう。
だれひとり、できません。
5 もし、彼の日数が限られ、その月の数もあなたが決めておられ、越えることのできない限界を、あなたが定めておられるなら、
6 彼から目をそらして、かまわないでください。
そうすれば、彼は日雇い人のように
自分の日を楽しむでしょう。

7 木には望みがある。
たとい切られても、また芽を出し、その若枝は絶えることがない。
8 たとい、その根が地中で老い、その根株が土の中で枯れても、
9 水分に出会うと芽をふき、苗木のように枝を出す。
10 しかし、人間は死ぬと、倒れたきりだ。
人は、息絶えると、どこにいるか。
11 水は海から消え去り、川は干上がり、かれる。
12 人は伏して起き上がらず、天がなくなるまで目ざめず、また、その眠りから起きない。

13 ああ、あなたが私をよみに隠し、あなたの怒りが過ぎ去るまで私を潜ませ、私のために時を定め、私を覚えてくださればよいのに。
14 人が死ぬと、生き返るでしょうか。
私の苦役の日の限り、私の代わりの者が来るまで待ちましょう。
15 あなたが呼んでくだされば、私は答えます。
あなたはご自分の手で造られたものを
慕っておられるでしょう。
16 今、あなたは私の歩みを数えておられますが、私の罪に目を留めず、
17 私のそむきの罪を袋の中に封じ込め、私の咎をおおってください。

18 しかし、山は倒れてくずれ去り、岩もその所から移される。
19 水は石をうがち、大水は地の泥を押し流す。
そのようにあなたは
人の望みを絶ち滅ぼされます。
20 あなたは、いつまでも人を打ち負かすので、人は過ぎ去って行きます。
あなたは彼の顔を変えて、彼を追いやられます。
21 自分の子らが尊ばれても、彼にはそれがわからず、彼らが卑しめられても、彼には見分けがつきません。
22 ただ、彼は自分の肉の痛みを覚え、そのたましいは自分のために嘆くだけです。

15章
1 テマン人エリファズが答えて言った。
2 知恵のある者は
むなしい知識をもって答えるだろうか。
東風によってその腹を満たすだろうか。
3 彼は無益なことばを使って論じ、役に立たない論法で論じるだろうか。
4 ところが、あなたは信仰を捨て、神に祈ることをやめている。
5 それは、あなたの罪があなたの口に教え、あなたが悪賢い人の舌を選び取るからだ。
6 あなたの口があなたを罪に定める。私ではない。
あなたのくちびるがあなたに不利な証言をする。

7 あなたは最初に生まれた人か。
あなたは丘より先に生み出されたのか。
8 あなたは神の会議にあずかり、あなたは知恵をひとり占めにしているのか。
9 あなたが知っていることを、私たちは知らないのだろうか。
あなたが悟るものは、私たちのうちに、ないのだろうか。
10 私たちの中には白髪の者も、老いた者もいる。
あなたの父よりもはるかに年上なのだ。
11 神の慰めと、あなたに優しく話しかけられたことばとは、あなたにとっては取るに足りないものだろうか。
12 なぜ、あなたは理性を失ったのか。
なぜ、あなたの目はぎらつくのか。
13 あなたが神に向かっていらだち、口からあのようなことばを吐くとは。
14 人がどうして、きよくありえようか。
女から生まれた者が、どうして、正しくありえようか。
15 見よ。神はご自身の聖なる者たちをも信頼しない。
天も神の目にはきよくない。
16 まして忌みきらうべき汚れた者、不正を水のように飲む人間は、なおさらだ。

17 私はあなたに告げよう。私に聞け。
私の見たところを述べよう。
18 それは知恵のある者たちが告げたもの、彼らの先祖が隠さなかったものだ。
19 彼らにだけ、この地は与えられ、他国人はその中を通り過ぎなかった。
20 悪者はその一生の間、もだえ苦しむ。
横暴な者にも、ある年数がたくわえられている。
21 その耳には恐ろしい音が聞こえ、平和なときにも荒らす者が彼を襲う。
22 彼はやみから帰って来ることを信ぜず、彼は剣につけねらわれている。
23 彼は食物を求めて、「どこだ」と言いながら、さまよい、やみの日がすぐそこに用意されているのを
知っている。
24 苦難と苦悩とが彼をおびえさせ、戦いの備えをした王のように彼に打ち勝つ。
25 それは彼が神に手向かい、全能者に対して高慢にふるまい、
26 厚い盾の取っ手を取って
おこがましくも神に向かって馳せかかるからだ。
27 また、彼は顔をあぶらでおおい、腰の回りは脂肪でふくれさせ、
28 荒らされた町、人の住まない家に、石くれの山となる所に、住んだからだ。
29 彼は富むこともなく、その財産も長くもたず、その影を地上に投げかけない。
30 彼はやみからのがれることができず、炎がその若枝を枯らし、神の御口の息によって彼は追い払われる。
31 迷わされて、むなしいことに信頼するな。
その報いはむなしい。
32 彼の時が来ないうちに、それは成し遂げられ、その葉は茂らない。
33 彼は、ぶどうの木のように、その未熟の実は振り落とされ、オリーブの木のように、その花は落とされる。
34 実に、神を敬わない者の仲間には実りがない。
わいろを使う者の天幕は火で焼き尽くされる。
35 彼らは害毒をはらみ、悪意を生み、その腹は欺きの備えをしている。

16章
1 ヨブは答えて言った。
2 そのようなことを、私は何度も聞いた。
あなたがたはみな、煩わしい慰め手だ。
3 むなしいことばに終わりがあろうか。
あなたは何に興奮して答えるのか。
4 私もまた、あなたがたのように語ることができる。
もし、あなたがたが私の立場にあったなら、私はことばを連ねてあなたがたを攻撃し、あなたがたに向かって、頭を振ったことだろう。
5 私は口先だけであなたがたを強くし、私のくちびるでの慰めを
やめなかったことだろう。

6 たとい、私が語っても、私の痛みは押さえられない。
たとい、私が忍んでも、どれだけ私からそれが去るだろう。

7 まことに神は今、私を疲れさせた。
あなたは私の仲間の者を
ことごとく荒らされました。
8 あなたは私を、つかみました。
私のやせ衰えた姿が、証人となり、私に向かって立ち、面と向かって答えをします。

9 神は怒って私を引き裂き、私を攻めたて、私に向かって歯ぎしりした。
私の敵は私に向かって目をぎらつかせる。
10 彼らは私に向かって口を大きくあけ、そしって私の頬を打ち、相集まって私を攻める。
11 神は私を小僧っ子に渡し、悪者の手に投げ込まれる。
12 私は安らかな身であったが、神は私を打ち砕き、私の首をつかまえて粉々にし、私を立ててご自分の的とされた。
13 その射手たちは私を巡り囲み、神は私の内臓を容赦なく射抜き、私の胆汁を地に流した。
14 神は私を打ち破って、破れに破れを加え、勇士のように私に向かって馳せかかる。
15 私は荒布をはだに縫いつけ、私の角をちりの中に突き刺した。
16 私の顔は泣いて赤くなり、私のまぶたには死の陰がある。
17 しかし、私の手には暴虐がなく、私の祈りはきよい。
18 地よ。私の血をおおうな。
私の叫びに休み場所を与えるな。

19 今でも天には、私の証人がおられます。
私を保証してくださる方は高い所におられます。
20 私の友は私をあざけります。
しかし、私の目は神に向かって涙を流します。
21 その方が、人のために
神にとりなしをしてくださいますように。
人の子がその友のために。
22 数年もたてば、私は帰らぬ旅路につくからです。

17章
1 私の霊は乱れ、私の日は尽き、私のものは墓場だけ。
2 しかも、あざける者らが、私とともにおり、私の目は彼らの敵意の中で夜を過ごす。
3 どうか、私を保証する者を
あなたのそばに置いてください。
ほかにだれか誓ってくれる者がありましょうか。
4 あなたが彼らの心を閉じて
悟ることがないようにされたからです。
それゆえ、あなたは彼らを高められないでしょう。

5 分け前を得るために友の告げ口をする者、その子らの目は衰え果てる。
6 神は私を民の物笑いとされた。
私は顔につばきをかけられる者となった。
7 私の目は悲しみのためにかすみ、私のからだは影のようだ。
8 正しい者はこのことに驚き、罪のない者は神を敬わない者に向かって憤る。
9 義人は自分の道を保ち、手のきよい人は力を増し加える。
10 だが、あなたがたはみな、帰って来るがよい。
私はあなたがたの中に
ひとりの知恵のある者も見いだすまい。
11 私の日は過ぎ去り、私の企て、私の心に抱いたことも破れ去った。
12 「夜は昼に変えられ、やみから光が近づく」と言うが、
13 もし私が、よみを私の住みかとして望み、やみに私の寝床をのべ、
14 その穴に向かって、「おまえは私の父だ」と言い、うじに向かって、「私の母、私の姉妹」と言うのなら、
15 私の望みはいったいどこにあるのか。
だれが、私の望みを見つけよう。
16 よみの深みに下っても、あるいは、共にちりの上に降りて行っても。

18章
1 そこでシュアハ人ビルダデが答えて言った。
2 いつ、あなたがたはその話にけりをつけるのか。
まず悟れ。それから私たちは語り合おう。
3 なぜ、私たちは獣のようにみなされるのか。
なぜ、あなたがたの目には汚れて見えるのか。
4 怒って自分自身を引き裂く者よ。
あなたのために地が見捨てられようか。
岩がその所から移されようか。
5 悪者どもの光は消え、その火の炎も輝かない。
6 彼の天幕のうちでは、光は暗くなり、彼を照らすともしびも消える。
7 彼の力強い歩みはせばめられ、おのれのはかりごとが彼を投げ倒す。
8 彼は自分の足で網にかかる。
落とし穴の上を歩むからだ。
9 わなは彼のかかとを捕らえ、しかけ網は彼をつかまえる。
10 地には彼のための輪繩が、その通り道には彼のためのわなが隠されている。
11 恐怖が回りから彼を脅かし、彼の足を追い立てる。
12 彼の精力は飢え、わざわいが
彼をつまずかせようとしている。
13 彼の皮膚を食らおうとしている。
死の初子が彼のからだを食らおうとしている。
14 彼はその拠り頼む天幕から引き抜かれ、恐怖の王のもとへ追いやられる。
15 彼の天幕には、彼のものではない者が住み、硫黄が彼の住まいの上にまき散らされる。
16 下ではその根が枯れ、上ではその枝がしなびる。
17 彼についての記憶は地から消えうせ、彼の名はちまたから消える。
18 彼は光からやみに追いやられ、世から追い出される。
19 彼には自分の民の中に親類縁者がなくなり、その住みかにはひとりの生存者もなくなる。
20 西に住む者は彼の日について驚き、東に住む者は恐怖に取りつかれる。
21 不正をする者の住みかは、まことに、このようであり、これが神を知らない者の住まいである。

19章
1 そこでヨブは答えて言った。
2 いつまで、あなたがたは私のたましいを悩まし、そんな論法で私を砕くのか。
3 もう、十度もあなたがたは
私に恥ずかしい思いをさせ、恥知らずにも私をいじめる。
4 もし、私がほんとうに
あやまって罪を犯したとしても、私のあやまって犯した罪が
私のうちにとどまっているだろうか。
5 あなたがたがほんとうに私に向かって高ぶり、私の受けたそしりのことで、私を責めるのなら、
6 いま知れ。「神が私を迷わせ、神の網で私を取り囲まれた」ことを。

7 見よ。私が、「これは暴虐だ」と叫んでも
答えはなく、助けを求めて叫んでも、それは正されない。
8 神が私の道をふさがれたので、私は過ぎ行くことができない。
私の通り道にやみを置いておられる。
9 神は私の栄光を私からはぎ取り、私の頭から冠を取り去られた。
10 神が四方から私を打ち倒すので、私は去って行く。
神は私の望みを木のように根こそぎにする。
11 神は私に向かって怒りを燃やし、私をご自分の敵のようにみなされる。
12 その軍勢は一つとなって進んで来、私に向かって彼らの道を築き上げ、私の天幕の回りに陣を敷く。
13 神は私の兄弟たちを私から遠ざけた。
私の知人は全く私から離れて行った。
14 私の親族は来なくなり、私の親しい友は私を忘れた。
15 私の家に寄宿している者も、私のはしためたちも、私を他国人のようにみなし、私は彼らの目には外国人のようになった。
16 私が自分のしもべを呼んでも、彼は返事もしない。
私は私の口で彼に請わなければならない。
17 私の息は私の妻にいやがられ、私の身内の者らにきらわれる。
18 小僧っ子までが私をさげすみ、私が起き上がると、私に言い逆らう。
19 私の親しい仲間はみな、私を忌みきらい、私の愛した人々も私にそむいた。
20 私の骨は皮と肉とにくっついてしまい、私はただ歯の皮だけでのがれた。

21 あなたがた、私の友よ。
私をあわれめ、私をあわれめ。
神の御手が私を打ったからだ。
22 なぜ、あなたがたは神のように、私を追いつめ、私の肉で満足しないのか。
23 ああ、今、できれば、私のことばが書き留められればよいのに。
ああ、書き物に刻まれればよいのに。
24 鉄の筆と鉛とによって、いつまでも岩に刻みつけられたい。
25 私は知っている。
私を贖う方は生きておられ、後の日に、ちりの上に立たれることを。
26 私の皮が、このようにはぎとられて後、私は、私の肉から神を見る。
27 この方を私は自分自身で見る。
私の目がこれを見る。ほかの者の目ではない。
私の内なる思いは私のうちで
絶え入るばかりだ。
28 もし、あなたがたが、事の原因を私のうちに見つけて、「彼をどのようにして追いつめようか」
と言うなら、
29 あなたがたは剣を恐れよ。
その剣は刑罰の憤りだから。
これによって、あなたがたは
さばきのあることを知るだろう。

20章
1 そこでナアマ人ツォファルは答えて言った。
2 それで、いらだつ思いが私に答えを促し、そのため、私は心あせる。
3 私の侮辱となる訓戒を聞いて、私の悟りの霊が私に答えさせる。
4 あなたはこのことを知っているはずだ。
昔から、地の上に人が置かれてから、
5 悪者の喜びは短く、神を敬わない者の楽しみはつかのまだ。
6 たとい彼の高ぶりが天まで上り、その頭が雲まで及んでも、
7 彼は自分の糞のようにとこしえに滅びる。
彼を見たことのある者たちは言う。
彼はどこにいるのかと。
8 彼は夢のように飛び去り、だれにも彼は見つけられない。
彼は夜の幻のように追い払われ、
9 彼を見慣れていた目は再び彼を見ず、彼のいた所はもはや彼を認めない。
10 彼の子らは貧民たちにあわれみを請い、彼の手は自分の財産を
取り戻さなければならない。
11 彼の骨が若さに満ちても、それも彼とともにちりに横たわる。
12 たとい悪が彼の口に甘く、彼がそれを舌の裏に隠しても、
13 あるいは、彼がこれを惜しんで、捨てず、その口の中にとどめていても、
14 彼の食べた物は、彼の腹の中で変わり、彼の中でコブラの毒となる。
15 彼は富をのみこんでも、またこれを吐き出す。
神がこれを彼の腹から追い払われる。
16 彼はコブラの毒を吸い、まむしの舌が彼を殺す。
17 彼は川を見ることがない。
すなわち、蜜と凝乳の流れる川を見ることがない。
18 彼は骨折って得たものを取り戻しても、それをのみこめない。
商いで得た富によっても楽しめない。
19 彼が寄るべのない者を踏みにじって見捨て、自分で建てなかった家をかすめたからだ。
20 彼の腹は足ることを知らないので、欲しがっている物は何一つ、彼はのがさない。
21 彼のむさぼりからのがれる物は一つもない。
だから、彼の繁栄は続かない。
22 満ち足りているときに、彼は貧乏になって苦しみ、苦しむ者の手がことごとく彼に押し寄せる。
23 彼が腹を満たそうとすると、神はその燃える怒りを彼の上に送り、憤りを彼の上に降らす。
24 彼は鉄の武器を免れても、青銅の弓が彼を射通す。
25 彼がそれを引き抜くと、それは彼の背中から出る。
きらめく矢じりが腹から出て、恐れが彼を襲う。
26 すべてのやみが彼の宝として隠され、人が吹きおこしたのではない火が
彼を焼き尽くし、彼の天幕に生き残っているものをも
そこなってしまう。
27 天は彼の罪をあらわし、地は彼に逆らって立つ。
28 彼の家の作物はさらわれ、御怒りの日に消えうせる。
29 これが悪者の、神からの分け前、神によって定められた彼の相続財産である。

21章
1 ヨブは答えて言った。
2 あなたがたは、私の言い分をよく聞け。
これをあなたがたの私への慰めとしてくれ。
3 まず、私が語るのを許してくれ。
私が語って後、あなたはあざけってもよい。
4 私の不平は人に向かってであろうか。
なぜ、私がいらだってはならないのか。
5 私のほうを見て驚け。
そして手を口に当てよ。
6 私は思い出すとおびえ、おののきが私の肉につかみかかる。
7 なぜ悪者どもが生きながらえ、年をとっても、なお力を増すのか。
8 彼らのすえは彼らとともに堅く立ち、その子孫は彼らの前に堅く立つ。
9 彼らの家は平和で恐れがなく、神の杖は彼らの上に下されない。
10 その牛は、はらませて、失敗することがなく、その雌牛は、子を産んで、仕損じがない。
11 彼らは自分の幼子たちを
羊の群れのように自由にさせ、彼らの子どもたちはとびはねる。
12 彼らはタンバリンと立琴に合わせて歌い、笛の音で楽しむ。
13 彼らはしあわせのうちに寿命を全うし、すぐによみに下る。
14 しかし、彼らは神に向かって言う。
「私たちから離れよ。
私たちは、あなたの道を知りたくない。
15 全能者が何者なので、私たちは彼に仕えなければならないのか。
私たちが彼に祈って、どんな利益があるのか」と。
16 見よ。彼らの繁栄はその手の中にない。
悪者のはかりごとは、私と何の関係もない。
17 幾たび、悪者のともしびが消え、わざわいが彼らの上に下り、神が怒って彼らに滅びを分け与えることか。
18 彼らは、風の前のわらのようではないか。
つむじ風に吹き去られる
もみがらのようではないか。
19 神はそのような者の子らのために、彼のわざわいをたくわえておられるのか。
彼自身が報いを受けて
思い知らなければならない。
20 彼の目が自分の滅びを見、彼が全能者の憤りをのまなければならない。
21 彼の日の数が短く定められているのに、自分の後の家のことに何の望みがあろうか。
22 彼は神に知識を教えようとするのか。
高い所におられる方がさばきを下すのだ。
23 ある者は元気盛りの時に、全く平穏のうちに死ぬだろう。
24 彼のからだは脂肪で満ち、その骨の髄は潤っている。
25 ある者は苦悩のうちに死に、何の幸いも味わうことがない。
26 彼らは共にちりに伏し、うじが彼らをおおう。

27 ああ、私はあなたがたの計画を知っている。
私をそこなおうとするたくらみを。
28 あなたがたは言う。「権門の家はどこにあるか。
悪者の住んだ天幕はどこにあるか」と。
29 あなたがたは道行く人に尋ねなかったか。
彼らのあかしをよく調べないのか。
30 「悪人はわざわいの日を免れ、激しい怒りの日から連れ出される」という。
31 だれが彼に面と向かって彼の道を告げえようか。
だれが彼のなしたことを彼に報いえようか。
32 彼は墓に運ばれ、その塚の上には見張りが立つ。
33 谷の土くれは彼に快く、すべての人が彼のあとについて行く。
彼より先に行った者も数えきれない。
34 どうしてあなたがたは、私を慰めようとするのか。むだなことだ。
あなたがたの答えることは、ただ不信実だ。

22章
1 テマン人エリファズが答えて言った。
2 人は神の役に立つことができようか。
賢い人さえ、ただ自分自身の役に立つだけだ。
3 あなたが正しくても、それが全能者に何の喜びであろうか。
あなたの道が潔白であっても、それが何の益になろう。
4 あなたとともに、さばきの座に、入って行かれ、あなたを責められるのは、あなたが神を恐れているためか。
5 いや、それはあなたの悪が大きくて、あなたの不義が果てしないからではないか。
6 あなたは理由もないのに
あなたの兄弟から質を取り、裸の者から着物をはぎ取り、
7 疲れている者に水も飲ませず、飢えている者に食物を拒んだからだ。
8 土地を持っている有力者のように、そこに住む有名人のように、
9 あなたはやもめを素手で去らせ、みなしごの腕を折った。
10 それでわながあなたを取り巻き、恐れが、にわかにあなたを脅かす。
11 あるいは、やみがあって、あなたは見ることもできず、みなぎる水があなたをおおう。
12 神は天の高きにおられるではないか。
見よ、星の頂を。それはなんと高いことか。
13 あなたは言う。「神に何がわかろうか。
黒雲を通してさばくことができようか。
14 濃い雲が神をおおっているので、神は見ることができない。
神は天の回りを歩き回るだけだ」と。
15 あなたは悪人が歩いたあの昔からの道を
守っていこうとするのか。
16 彼らは時がまだ来ないうちに取り去られ、彼らの土台は流れに押し流された。
17 彼らは神に向かって言った。
「私たちから離れよ。
全能者が私たちに何ができようか」と。
18 しかし、神は彼らの家を良い物で満たされた。
だが、悪者のはかりごとは私と何の関係もない。
19 正しい者は見て喜び、罪のない者は彼らをあざけって言う。
20 「まことに、私たちに立ち向かった者は滅ぼされ、彼らの残した物は火が焼き尽くした。」

21 さあ、あなたは神と和らぎ、平和を得よ。
そうすればあなたに幸いが来よう。
22 神の御口からおしえを受け、そのみことばを心にとどめよ。
23 あなたがもし全能者に立ち返るなら、あなたは再び立ち直る。
あなたは自分の天幕から不正を遠ざけ、
24 宝をちりの上に置き、オフィルの金を川の小石の間に置け。
25 そうすれば全能者はあなたの黄金となり、尊い銀があなたのものとなる。
26 そのとき、あなたは全能者をあなたの喜びとし、神に向かってあなたの顔を上げる。
27 あなたが神に祈れば、神はあなたに聞き、あなたは自分の誓願を果たせよう。
28 あなたが事を決めると、それは成り、あなたの道の上には光が輝く。
29 あなたが低くされると、あなたは高められたと言おう。
神はへりくだる者を救われるからだ。
30 神は罪ある者さえ救う。
その人はあなたの手のきよいことによって
救われる。

23章
1 ヨブは答えて言った。
2 きょうもまた、私はそむく心でうめき、私の手は自分の嘆きのために重い。
3 ああ、できれば、どこで神に会えるかを知り、その御座にまで行きたい。
4 私は御前に訴えを並べたて、ことばの限り討論したい。
5 私は神が答えることばを知り、私に言われることが何であるかを悟りたい。
6 神は力強く私と争われるだろうか。
いや、むしろ私に心を留めてくださろう。
7 そこでは正しい人が神と論じ合おう。
そうすれば私は、とこしえにさばきを免れる。

8 ああ、私が前へ進んでも、神はおられず、うしろに行っても、神を認めることができない。
9 左に向かって行っても、私は神を見ず、右に向きを変えても、私は会うことができない。
10 しかし、神は、私の行く道を知っておられる。
神は私を調べられる。
私は金のように、出て来る。
11 私の足は神の歩みにつき従い、神の道を守って、それなかった。
12 私は神のくちびるの命令から離れず、私の定めよりも、御口のことばをたくわえた。
13 しかし、みこころは一つである。
だれがそれを翻すことができようか。
神はこころの欲するところを行われる。
14 神は、私について定めたことを、成し遂げられるからだ。
このような多くの定めが神のうちにある。
15 だから、私は神の前でおびえ、これを思って、神を恐れているのだ。
16 神は私の心を弱くし、全能者は私をおびえさせた。
17 私はやみによって消されず、彼が、暗黒を私の前からなくされたからだ。

24章
1 なぜ、全能者によって時が隠されていないのに、神を知る者たちがその日を見ないのか。
2 ある者は地境を動かし、群れを奪い取ってこれを飼い、
3 みなしごのろばを連れ去り、やもめの牛を質に取り、
4 貧しい者を道から押しのける。
その地の哀れな人々は、共に身を隠す。
5 見よ。荒野の野ろばを。
彼らは、出て行き、荒れた地で獲物を求めて捜し回り、自分の子らのためにえさを求める。
6 飼葉を畑で刈り取り、悪者のぶどう畑をかすめる。
7 彼らは着る物もなく、裸で夜を明かし、寒さの中でも身をおおう物がない。
8 山のあらしでずぶぬれになり、避け所もなく、岩を抱く。
9 彼らはみなしごを乳房からもぎ取り、貧しい者の持ち物を質に取る。
10 彼らは着る物もなく、裸で歩き、飢えながら麦束をになう。
11 その植え込みの間で油をしぼり、酒ぶねを踏みながら、なお渇く。
12 人の住む町からうめき声が起こり、傷ついた者のたましいは助けを求めて叫ぶ。
しかし、神はその愚痴に心を留められない。
13 これらの者は光に反逆する者で、光の道を認めず、また、その通り道にとどまらない。
14 人殺しは、夜明けに起き上がり、哀れな者や貧しい者を殺し、夜には盗人のようになる。
15 姦通する者の目は夕暮れを待ちもうけ、「私に気づく目はない」と言い、その顔におおう物を当てる。
16 彼は暗くなってから、家々に侵入する。
昼間は閉じこもって光を知らない。
17 すべて彼にとっては暗黒が朝である。
彼は暗黒の恐怖と親しいからだ。

18 彼は水の面をすばやく過ぎ去り、彼の割り当ての地は国の中でのろわれる。
彼はぶどう畑の道のほうに向かわない。
19 ひでりと暑さは雪の水を奪い、よみは罪を犯した者を奪う。
20 母の胎は彼を忘れ、うじは彼を好んで食べ、彼はもう思い出されない。
不正な者は木のように折られてしまう。

21 彼は子を産まない不妊の女を食いものにし、やもめによくしてやらない。
22 しかし、神は力をもって
暴虐な者たちを生きのびるようにされる。
彼はいのちがあるとは信じられないときにも
立ち上がる。
23 神が彼に安全を与える。
それで、彼は休むことができる。
神の目は彼らの道の上に注がれる。
24 彼らはしばらくの間、高められるが、消えうせる。
彼らは低くされ、ほかのすべての者と同じように刈り集められる。
麦の穂先のように枯れてしまう。
25 今そうでないからといって、だれが私をまやかし者だと言えよう。
だれが私のことばを
たわごとにしようとするのか。

25章
1 シュアハ人ビルダデが答えて言った。
2 主権と恐れとは神のもの。
神はその高き所で平和をつくる。
3 その軍勢の数ほどのものがほかにあろうか。
その光に照らされないものがだれかいようか。
4 人はどうして神の前に正しくありえようか。
女から生まれた者が、どうしてきよくありえようか。
5 ああ、神の目には
月さえも輝きがなく、星もきよくない。
6 ましてうじである人間、虫けらの人の子はなおさらである。

26章
1 ヨブは答えて言った。
2 あなたは無力な者をどのようにして助けたのか。
力のない腕をどのようにして救ったのか。
3 知恵のない者をどのようにしていさめ、豊かなすぐれた知性を示したのか。
4 あなたはだれに対してことばを告げているのか。
だれの息があなたから出たのか。

5 死者の霊は、水とそこに住むものとの下にあって震える。
6 よみも神の前では裸であり、滅びの淵もおおわれない。
7 神は北を虚空に張り、地を何もない上に掛けられる。
8 神は水を濃い雲の中に包まれるが、その下の雲は裂けない。
9 神は御座の面をおおい、その上に雲を広げ、
10 水の面に円を描いて、光とやみとの境とされた。
11 神がしかると、天の柱は震い、恐れる。
12 神は御力によって海をかき立て、神の英知をもってラハブを打ち砕く。
13 その息によって天は晴れ渡り、御手は逃げる蛇を刺し通す。
14 見よ。これらはただ神の道の外側にすぎない。
私たちはただ、神についてのささやきしか聞いていない。
だれが、その力ある雷を聞き分けえようか。

27章
1 ヨブはまた、自分の格言を取り上げて言った。
2 私の権利を取り去った神、私のたましいを苦しめた全能者をさして誓う。
3 私の息が私のうちにあり、神の霊が私の鼻にあるかぎり、
4 私のくちびるは不正を言わず、私の舌は決して欺きを告げない。
5 あなたがたを義と認めることは、私には絶対にできない。
私は息絶えるまで、自分の潔白を離さない。
6 私は自分の義を堅く保って、手放さない。
私の良心は生涯私を責めはしない。
7 私の敵は不正をする者のようになれ。
私に立ち向かう者はよこしまな者のようになれ。

8 神を敬わない者の望みはどうなるであろうか。
神が彼を断ち切り、そのいのちを取り去るときは。
9 苦しみが彼にふりかかるとき、神は彼の叫びを聞かれるであろうか。
10 彼は全能者を彼の喜びとするだろうか。
どんな時にも神を呼ぶだろうか。
11 私は神の御手について
あなたがたに教えよう。
全能者のもとにあるものを私は隠すまい。
12 ああ、あなたがたはみな、それを見たのに、なぜ、あなたがたは全くむなしいことを言うのか。

13 悪者の神からの分け前、横暴な者が全能者から受け取る相続財産は
次のとおりだ。
14 たとい、彼の子どもたちがふえても、剣にかかる。
その子孫はパンに飽き足ることはない。
15 その生き残った者も死んで葬られ、そのやもめらは泣きもしない。
16 彼が銀をちりのように積み上げ、衣装を土のようにたくわえても、
17 彼がたくわえたものは、正しい者がこれを着、銀は、罪のない者が分け取る。
18 彼はしみが建てるような家を建てる。
それは番人が作る仮小屋のようだ。
19 富む者が寝ると、もうそれきりだ。
彼が目を開くと、もうそれはない。
20 恐怖が洪水のように彼を襲い、夜にはつむじ風が彼を運び去る。
21 東風が彼を吹き上げると、彼は去り、彼をそのいる所から吹き払う。
22 神は容赦なくそれを彼に投げつけ、彼は御手からなんとかしてのがれようとする。
23 人々は彼に向かって手をたたき、彼をあざけって、そのいる所から追い出す。

28章
1 まことに、銀には鉱山があり、金には精錬する所がある。
2 鉄は土から取られ、銅は石を溶かして取る。
3 人はやみを目当てとし、その隅々にまで行って、暗やみと暗黒の石を捜し出す。
4 彼は、人里離れた所に、縦坑を掘り込み、行きかう人に忘れられ、人から離れてそこにぶら下がり、揺れ動く。
5 地そのものは、そこから食物を出すが、その下は火のように沸き返っている。
6 その石はサファイヤの出るもと、そのちりには金がある。
7 その通り道は猛禽も知らず、はやぶさの目もこれをねらったことがない。
8 誇り高い獣もこれを踏まず、たける獅子もここを通ったことがない。
9 彼は堅い岩に手を加え、山々をその基からくつがえす。
10 彼は岩に坑道を切り開き、その目はすべての宝を見る。
11 彼は川をせきとめ、したたることもないようにし、隠されている物を明るみに持ち出す。

12 しかし、知恵はどこから見つけ出されるのか。
悟りのある所はどこか。
13 人はその評価ができない。
それは生ける者の地では見つけられない。
14 深い淵は言う。「私の中にはそれはない。」
海は言う。「私のところにはない。」
15 それは純金をもってしても得られない。
銀を量ってもその代価とすることができない。
16 オフィルの金でも
その値踏みをすることができず、高価なしまめのうや、サファイヤでもできない。
17 金も玻璃もこれと並ぶことができず、純金の器とも、これは取り替えられない。
18 さんごも水晶も言うに足りない。
知恵を獲得するのは真珠にまさる。
19 クシュのトパーズもこれと並ぶことができず、純金でもその値踏みをすることはできない。

20 では、知恵はどこから来るのか。
悟りのある所はどこか。
21 それはすべての生き物の目に隠され、空の鳥にもわからない。
22 滅びの淵も、死も言う。
「私たちはそのうわさを
この耳で聞いたことがある。」
23 しかし、神はその道をわきまえておられ、神はその所を知っておられる。
24 神は地の隅々まで見渡し、天の下をことごとく見られるからだ。
25 神は風を重くし、水をはかりで量られる。
26 神は、雨のためにその降り方を決め、いなびかりのために道を決められた。
27 そのとき、神は知恵を見て、これを見積もり、これを定めて、調べ上げられた。
28 こうして、神は人に仰せられた。
「見よ。主を恐れること、これが知恵である。
悪から離れることは悟りである。」

29章
1 ヨブはまた、自分の格言を取り上げて言った。
2 ああ、できれば、私は、昔の月日のようであったらよいのに。
神が私を守ってくださった
日々のようであったらよいのに。
3 あのとき、神のともしびが私の頭を照らし、その光によって私はやみを歩いた。
4 私がまだ壮年であったころ、神は天幕の私に語りかけてくださった。
5 全能者がまだ私とともにおられたとき、私の子どもたちは、私の回りにいた。
6 あのとき、私の足跡は乳で洗われ、岩は私に油の流れを注ぎ出してくれたのに。
7 私は町の門に出て行き、私のすわる所を広場に設けた。
8 若者たちは私を見て身をひき、年老いた者も起き上がって立った。
9 つかさたちは黙ってしまい、手を口に当てていた。
10 首長たちの声もひそまり、その舌は上あごについた。
11 私について聞いた耳は、私を賞賛し、私を見た目は、それをあかしした。
12 それは私が、助けを叫び求める貧しい者を助け出し、身寄りのないみなしごを助け出したからだ。
13 死にかかっている者の祝福が私に届き、やもめの心を私は喜ばせた。
14 私は義をまとい、義は私をおおった。
私の公義は上着であり、かぶり物であった。
15 私は目の見えない者の目となり、足のなえた者の足となった。
16 私は貧しい者の父であり、見知らぬ者の訴訟を調べてやった。
17 私はまた、不正をする者のあごを砕き、その歯の間から獲物を引き抜いた。
18 そこで私は考えた。
私は私の巣とともに息絶えるが、不死鳥のように、私は日をふやそう。
19 私の根は水に向かって根を張り、夜露が私の枝に宿ろう。
20 私の栄光は私とともに新しくなり、私の弓は私の手で次々に矢を放つ。

21 人々は、私に聞き入って待ち、私の意見にも黙っていた。
22 私が言ったあとでも言い返さず、私の話は彼らの上に降り注いだ。
23 彼らは雨を待つように私を待ち、後の雨を待つように
彼らは口を大きくあけて待った。
24 私が彼らにほほえみかけても、彼らはそれを信じることができなかった。
私の顔の光はかげらなかった。
25 私は彼らの道を選んでやり、首長として座に着いた。
また、王として軍勢とともに住まい、しかも、嘆く者を慰める者のようであった。

30章
1 しかし今は、私よりも若い者たちが、私をあざ笑う。
彼らの父は、私が軽く見て、私の群れの番犬とともにいさせたものだ。
2 彼らの手の力も私に何の役に立とうか。
彼らから気力が消えうせた。
3 彼らは欠乏とききんでやつれ、荒れ果てた廃墟の暗やみで砂漠をかじる。
4 彼らはやぶの中のおかひじきを摘み、えにしだの根を彼らの食物とする。
5 彼らは世間から追い出され、人々は盗人を追うように、彼らに大声で叫ぶ。
6 彼らは谷の斜面や、土や岩の穴に住み、
7 やぶの中でつぶやき、いらくさの下に群がる。
8 彼らはしれ者の子たち、つまらぬ者の子たち、国からむちでたたき出された者たちだ。

9 それなのに、今や、私は彼らのあざけりの歌となり、その笑いぐさとなっている。
10 彼らは私を忌みきらって、私から遠ざかり、私の顔に情け容赦もなくつばきを吐きかける。
11 神が私の綱を解いて、私を悩まされたので、彼らも手綱を私の前に投げ捨てた。
12 この悪童どもは、私の右手に立ち、私の足をもつれさせ、私に向かって滅びの道を築いた。
13 彼らは私の通り道をこわし、私の滅びを推し進める。
だれも彼らを押し止める者はいない。
14 彼らは、広い破れ口から入って来るように、あらしの中を押し寄せて来る。
15 恐怖が私にふりかかり、私の威厳を、あの風のように追い立てる。
私の繁栄は雨雲のように過ぎ去った。

16 今、私は心を自分に注ぐ。
悩みの日に私は捕らえられた。
17 夜は私の骨を私からえぐりとり、私をむしばむものは、休まない。
18 それは大きな力で、私の着物に姿を変え、まるで長服のように
私に巻きついている。
19 神は私を泥の中に投げ込み、私はちりや灰のようになった。

20 私はあなたに向かって叫びますが、あなたはお答えになりません。
私が立っていても、あなたは私に目を留めてくださいません。
21 あなたは、私にとって、残酷な方に変わられ、御手の力で、私を攻めたてられます。
22 あなたは私を吹き上げて風に乗せ、すぐれた知性で、私をきりもみにされます。
23 私は知っています、あなたは私を死に帰らせ、すべての生き物の集まる家に帰らせることを。

24 それでも、廃墟の中で
人は手を差し伸べないだろうか。
その衰えているとき、助けを叫ばないだろうか。
25 私は不運な人のために
泣かなかっただろうか。
私のたましいは貧しい者のために
悲しまなかっただろうか。
26 私が善を望んだのに、悪が来、光を待ち望んだのに、暗やみが来た。
27 私のはらわたは、休みなく煮えたぎる。
悩みの日が私に立ち向かっている。
28 私は、日にも当たらず、泣き悲しんで歩き回り、つどいの中に立って助けを叫び求める。
29 私はジャッカルの兄弟となり、だちょうの仲間となった。
30 私の皮膚は黒ずんではげ落ち、骨は熱で焼けている。
31 私の立琴は喪のためとなり、私の笛は泣き悲しむ声となった。

31章
1 私は自分の目と契約を結んだ。
どうしておとめに目を留めよう。
2 神が上から分けてくださる分け前は何か。
全能者が高い所から下さる相続財産は何か。
3 不正をする者にはわざわいが、不法を行う者には
災難が来るのではないか。
4 神は私の道を見られないのだろうか。
私の歩みをことごとく
数えられないのだろうか。
5 もし私がうそとともに歩み、この足が欺きに急いだのなら、
6 正しいはかりで私を量るがよい。
そうすれば神に私の潔白がわかるだろう。
7 もし、私の歩みが道からそれ、私の心が自分の目に従って歩み、私の手によごれがついていたなら、
8 私が種を蒔いて他の人が食べるがよい。
私の作物は根こぎにされるがよい。
9 もしも、私の心が女に惑わされ、隣人の門で待ち伏せしたことがあったなら、
10 私の妻が他人のために粉をひいてもよい。
また、他人が彼女と寝てもよい。
11 これは恥ずべき行い、裁判にかけて罰せられる罪だ。
12 実に、それは滅びの淵まで焼き尽くす火だ。
私の収穫をことごとく根こぎにする。
13 私のしもべや、はしためが、私と争ったとき、もし、私が彼らの言い分を
ないがしろにしたことがあるなら、
14 神が立たれるとき、私はどうすればよいか。
また、神がお調べになるとき、何と答えたらよいか。
15 私を胎内で造られた方は、彼らをも造られたのではないか。
私たちを母の胎内に形造られた方は、ただひとりではないか。

16 もし、私が寄るべのない者の望みを退け、やもめの目を衰え果てさせ、
17 私ひとりだけで食物を食べて、みなしごにそれを食べさせなかったのなら、
18 ――私の若いときから、彼は私を父のようにして育ち、私は、母の胎にいたときから、彼女を導いた――
19 もし、私が、着る物がなくて死にかかっている者や、身をおおう物を持っていない
貧しい者を見たとき、
20 彼の腰が私にあいさつをせず、私の子羊の毛で
それが暖められなかったのなら、
21 あるいは、私を助ける者が
門のところにいるのを見ながら、みなしごに向かって私の手を
振り上げたことがあるなら、
22 私の肩の骨が肩から落ち、私の腕がつけ根から折れてもよい。
23 神からのわざわいは私をおびえさせ、その威厳のゆえに、私は何もすることができないからだ。
24 もし、私が金をおのれの頼みとし、黄金に向かって、私の拠り頼むもの、と言ったことがあるなら、
25 あるいは、私の富が多いので喜び、私の手が多くの物を得たので、喜んだことがあるなら、
26 あるいは、輝く日の光を見、照りながら動く月を見て、
27 私の心がひそかに惑わされ、手をもって口づけを投げかけたことがあるなら、
28 これもまた裁判にかけて罰せられる罪だ。
私が上なる神を否んだためだ。

29 あるいは、私を憎む者の衰えているのを
私が見て喜び、彼にわざわいが下ったとき、喜び勇んだことがあろうか。
30 私は自分の口に罪を犯させなかった。
のろって彼のいのちを求めようともしなかった。
31 いったい、私の天幕の人々で、「だれか、彼の肉に
飽き足りなかった者はいないか」
と言わなかったことがあろうか。
32 異国人は外で夜を過ごさず、私は戸口を通りに向けてあけている。
33 あるいは、私がアダムのように、自分のそむきの罪をおおい隠し、自分の咎を胸の中に秘めたことがあろうか。
34 私が群集の騒ぎにおびえ、一族のさげすみを恐れて黙り、門を出なかったことがあろうか。
35 だれか私に聞いてくれる者はないものか。
見よ。私を確認してくださる方、全能者が私に答えてくださる。
私を訴える者が書いた告訴状があれば、
36 私はそれを肩に負い、冠のように、それをこの身に結びつけ、
37 私の歩みの数をこの方に告げ、君主のようにして近づきたい。
38 もし、私の土地が私に向かって叫び、そのうねが共に泣くことがあるなら、
39 あるいは、私が金を払わないで
その産物を食べ、その持ち主のいのちを失わせたことがあるなら、
40 小麦の代わりにいばらが生え、大麦の代わりに雑草がはびこるように。
ヨブのことばは終わった。

32章
1 この三人の者はヨブに答えるのをやめた。それはヨブが自分は正しいと思っていたからである。
2 すると、ラム族のブズ人、バラクエルの子エリフが怒りを燃やした。彼がヨブに向かって怒りを燃やしたのは、ヨブが神よりもむしろ自分自身を義としたからである。
3 彼はまた、その三人の友に向かっても怒りを燃やした。彼らがヨブを罪ある者としながら、言い返すことができなかったからである。
4 エリフはヨブに語りかけようと待っていた。彼らが自分よりも年長だったからである。
5 しかし、エリフは三人の者の口に答えがないのを見て、怒りを燃やした。
6 ブズ人、バラクエルの子エリフは答えて言った。
私は若く、あなたがたは年寄りだ。
だから、わきに控えて、遠慮し、あなたがたに私の意見を述べなかった。
7 私は思った。
「日を重ねた者が語り、年の多い者が知恵を教える」と。
8 しかし、人の中には確かに霊がある。
全能者の息が人に悟りを与える。
9 年長者が知恵深いわけではない。
老人が道理をわきまえるわけでもない。
10 だから、私は言う。
「私の言うことを聞いてくれ。
私も、また私の意見を述べよう。」
11 今まで私はあなたがたの言うことに期待し、あなたがたの言い分を調べ上げるまで、あなたがたの意見に耳を傾けていた。
12 私はあなたがたに注意を払っていたのに、ヨブに罪を認めさせる者はなく、あなたがたのうちで
彼のことばに答える者もいない。
13 だが、おそらくあなたがたは言おう。
「私たちは知恵を見いだした。
人ではなく、神が彼を吹き払った」と。
14 彼はまだ私に向かって
ことばを並べたててはいない。
私はあなたがたのような言い方では
彼に答えまい。

15 彼らはあきれて、もう答えない。
彼らの言うことばもなくなった。
16 彼らが語らず、そのままじっと答えないからといって、私は待っていなければならないだろうか。
17 私は私で自分の言い分を言い返し、私の意見を述べてみよう。
18 私にはことばがあふれており、一つの霊が私を圧迫している。私の腹を。
19 今、私の腹は抜け口のないぶどう酒のようだ。
新しいぶどう酒の皮袋のように、今にも張り裂けようとしている。
20 私は語って、気分を晴らしたい。
くちびるを開いて答えたい。
21 私はだれをもひいきしない。
どんな人にもへつらわない。
22 へつらうことを知らないから。
そうでなければ、私を造った方は
今すぐ、私を奪い去ろう。

33章
1 そこでヨブよ。
どうか、私の言い分を聞いてほしい。
私のすべてのことばに耳を傾けてほしい。
2 さあ、私は口を開き、私の舌はこの口の中で語ろう。
3 私の言うことは真心からだ。
私のくちびるは、きよく知識を語る。
4 神の霊が私を造り、全能者の息が私にいのちを与える。
5 あなたにできれば、私に返事をし、ことばを並べたて、私の前に立ってみよ。
6 実に、神にとって、私はあなたと同様だ。
私もまた粘土で形造られた。
7 見よ。私のおどしも、あなたをおびえさせない。
私が強く圧しても、あなたには重くない。
8 確かにあなたは、この耳に言った。
私はあなたの話す声を聞いた。
9 「私はきよく、そむきの罪を犯さなかった。
私は純潔で、よこしまなことがない。
10 それなのに、神は私を攻める口実を見つけ、私を敵のようにみなされる。
11 神は私の足にかせをはめ、私の歩みをことごとく見張る。」

12 聞け。私はあなたに答える。
このことであなたは正しくない。
神は人よりも偉大だからである。
13 なぜ、あなたは神と言い争うのか。
自分のことばに
神がいちいち答えてくださらないといって。
14 神はある方法で語られ、また、ほかの方法で語られるが、人はそれに気づかない。
15 夜の幻と、夢の中で、または深い眠りが人々を襲うとき、あるいは寝床の上でまどろむとき、
16 そのとき、神はその人たちの耳を開き、このような恐ろしいかたちで彼らをおびえさせ、
17 人にその悪いわざを取り除かせ、人間から高ぶりを離れさせる。
18 神は人のたましいが、よみの穴に、入らないようにし、そのいのちが槍で滅びないようにされる。
19 あるいは、人を床の上で痛みによって責め、その骨の多くをしびれさせる。
20 彼のいのちは食物をいとい、そのたましいはうまい物をいとう。
21 その肉は衰え果てて見えなくなり、見えなかった骨があらわになる。
22 そのたましいはよみの穴に近づき、そのいのちは殺す者たちに近づく。
23 もし彼のそばに、ひとりの御使い、すなわち千人にひとりの代言者がおり、それが人に代わって
その正しさを告げてくれるなら、
24 神は彼をあわれんで仰せられる。
「彼を救って、よみの穴に下って行かないようにせよ。
わたしは身代金を得た。」
25 彼の肉は幼子のように、まるまる太り、彼は青年のころに返る。
26 彼が神に祈ると、彼は受け入れられる。
彼は喜びをもって御顔を見、神はその人に彼の義を報いてくださる。
27 彼は人々を見つめて言う。
「私は罪を犯し、正しい事を曲げた。
しかし、神は私のようではなかった。
28 神は私のたましいを贖ってよみの穴に下らせず、私のいのちは光を見る」と。

29 見よ。神はこれらすべてのことを、二度も三度も人に行われ、
30 人のたましいをよみの穴から引き戻し、いのちの光で照らされる。
31 耳を貸せ。ヨブ。私に聞け。
黙れ。私が語ろう。
32 もし、言い分があるならば、私に言い返せ。
言ってみよ。
あなたの正しいことを示してほしいからだ。
33 そうでなければ私に聞け。
黙れ。あなたに知恵を教えよう。

34章
1 エリフは続けて言った。
2 知恵のある人々よ。私の言い分を聞け。
知識のある人々よ。私に耳を傾けよ。
3 口が食物の味を知るように、耳はことばを聞き分ける。
4 さあ、私たちは一つの定めを選び取り、私たちの間で
何が良いことであるかを見分けよう。
5 ヨブはかつてこう言った。
「私は正しい。
神が私の正義を取り去った。
6 私は自分の正義に反して、まやかしを言えようか。
私はそむきの罪を犯していないが、私の矢傷は直らない。」
7 ヨブのような人がほかにあろうか。
彼はあざけりを水のようにのみ、
8 不法を行う者どもとよく交わり、悪人たちとともに歩んだ。
9 彼は言った。「神と親しんでも、それは人の役に立たない。」

10 だから、あなたがた分別のある人々よ。
私に聞け。
神が悪を行うなど、全能者が不正をするなど、絶対にそういうことはない。
11 神は、人の行いをその身に報い、人に、それぞれ自分の道を見つけるようにされる。
12 神は決して悪を行わない。
全能者は公義を曲げない。
13 だれが、この地を神にゆだねたのか。
だれが、全世界を神に任せたのか。
14 もし、神がご自分だけに心を留め、その霊と息をご自分に集められたら、
15 すべての肉なるものは共に息絶え、人はちりに帰る。

16 あなたに悟りがあるなら、これを聞け。
私の話す声に耳を傾けよ。
17 いったい、公義を憎む者が
治めることができようか。
正しく力ある方を、あなたは罪に定めることができようか。
18 人が王に向かって、「よこしまな者」と言い、高貴な人に向かって、「悪者」と言えるだろうか。
19 この方は首長たちを、えこひいきせず、貧民よりも上流の人を重んじることはない。
なぜなら、彼らはみな、神の御手のわざだから。
20 彼らはまたたくまに、それも真夜中に死に、民は震えて過ぎ去る。
強い者たちも人の手によらないで取り去られる。
21 神の御目が人の道の上にあり、その歩みをすべて見ているからだ。
22 不法を行う者どもが身を隠せるような、やみもなく、暗黒もない。
23 人がさばきのときに神のみもとに出るのに、神は人について、そのほか何も定めておられないからだ。
24 神は力ある者を取り調べることなく打ち滅ぼし、これに代えて他の者を立てられる。
25 神は彼らのしたことを知っておられるので、夜、彼らをくつがえされる。
こうして彼らは砕かれる。
26 神は、人々の見ているところで、彼らを、悪者として打たれる。
27 それは、彼らが神にそむいて従わず、神のすべての道に心を留めなかったからである。
28 こうして彼らは寄るべのない者の叫びを
神の耳に入れるようにし、神は悩める者の叫びを聞き入れられる。
29 神が黙っておられるとき、だれが神をとがめえよう。
神が御顔を隠されるとき、だれが神を認めえよう。
一つの国民にも、ひとりの人にも同様だ。
30 神を敬わない人間が治めないために、民をわなにかける者がいなくなるために。

31 神に向かってだれが言ったのか。
「私は懲らしめを受けました。
私はもう罪を犯しません。
32 私の見ないことをあなたが私に教えてください。
私が不正をしたのでしたら、もういたしません」と。
33 あなたが反対するからといって、神はあなたの願うとおりに報復なさるだろうか。
私ではなく、あなたが選ぶがよい。
あなたの知っていることを言うがよい。
34 分別のある人々や、私に聞く、知恵のある人は私に言う。
35 「ヨブは知識がなくて語る。
彼のことばには思慮がない」と。
36 どうか、ヨブが最後までためされるように。
彼は不法者のように
言い返しをするから。
37 彼は、自分の罪にそむきの罪を加え、私たちの間で手を打ち鳴らし、神に対してことば数を多くする。

35章
1 エリフはさらに続けて言った。
2 あなたはこのことを正義によると思うのか。
「私の義は神からだ」とでも言うのか。
3 あなたは言っている。
「何があなたの役に立つのでしょうか。
私が罪を犯さないと、どんな利益がありましょうか」と。
4 私はあなたと、またあなたとともにいるあなたの友人たちに
答えて言おう。
5 天を仰ぎ見よ。
あなたより、はるかに高い雲を見よ。
6 あなたが罪を犯しても、神に対して何ができよう。
あなたのそむきの罪が多くても、あなたは神に何をなしえようか。
7 あなたが正しくても、あなたは神に何を与ええようか。
神は、あなたの手から何を受けられるだろうか。
8 あなたの悪は、ただ、あなたのような人間に、あなたの正しさは、ただ、人の子に、かかわりを持つだけだ。

9 人々は、多くのしいたげのために泣き叫び、力ある者の腕のために助けを叫び求める。
10 しかし、だれも問わない。
「私の造り主である神はどこにおられるか。
夜には、ほめ歌を与え、
11 地の獣よりも、むしろ、私たちに教え、空の鳥よりも、むしろ、私たちに知恵を
授けてくださる方は」と。
12 そこでは、彼らが泣き叫んでも答えはない。
悪人がおごり高ぶっているからだ。
13 神は決してむなしい叫びを聞き入れず、全能者はこれに心を留めない。
14 しかも、あなたは
神を見ることができないと言っている。
訴えは神の前にある。
あなたは神を待て。
15 しかし今、神は怒って罰しないだろうか。
ひどい罪を知らないだろうか。
16 ヨブはいたずらに口を大きく開き、知識もなく、自分の言い分を述べたてる。

36章
1 エリフはさらに続けて言った。
2 しばらく待て。あなたに示そう。
まだ、神のために言い分があるからだ。
3 私は遠くから私の意見を持って来て、私の造り主に義を返そう。
4 確かに私の言い分は偽りではない。
完全な知識を持つ方が
あなたのそばにいるからだ。

5 見よ。神は強い。
だが、だれをもさげすまない。
その理解の力は強い。
6 神は悪者を生かしてはおかず、しいたげられている者には権利を与えられる。
7 神は、正しい者から目を離さず、彼らを王たちとともに王座に着け、永遠に座に着かせて、高められる。
8 もし、彼らが鎖で縛られ、悩みのなわに捕らえられると、
9 そのとき、神は、彼らのしたことを彼らに告げ、彼らがおごり高ぶったそむきの罪を告げる。
10 神は彼らの耳を開いて戒め、悪から立ち返るように命じる。
11 もし彼らが聞き入れて仕えるなら、彼らはその日々をしあわせのうちに全うし、その年々を楽しく過ごす。
12 しかし、もし聞き入れなければ、彼らは槍によって滅び、知識を持たないで息絶える。

13 心で神を敬わない者は、怒りをたくわえ、神が彼らを縛るとき、彼らは助けを求めて叫ばない。
14 彼らのたましいは若くして死に、そのいのちは腐れている。

15 神は悩んでいる者をその悩みの中で助け出し、そのしいたげの中で彼らの耳を開かれる。
16 まことに、神はあなたを苦しみの中から誘い出し、束縛のない広い所に導き、あなたの食卓には、あぶらぎった食物が備えられる。
17 しかし、あなたには
悪者の受けるさばきが満ちている。
それでさばきと公義があなたをつかまえる。
18 だから、あなたは憤って、懲らしめに誘い込まれないようにせよ。
身代金が多いからといって、あなたはそれに惑わされないようにせよ。
19 あなたの叫びが並べたてられても、力の限りが尽くされても、それが役に立つだろうか。
20 国々の民が取り去られる夜を
あえぎ求めてはならない。
21 悪に向かわないように注意せよ。
あなたは悩みよりも、これを選んだのだから。

22 見よ。神は力にすぐれておられる。
神のような教師が、だれかいようか。
23 だれが、神にその道を指図したのか。
だれが、「あなたは不正をした」と言ったのか。
24 人々がほめ歌った神のみわざを覚えて賛美せよ。
25 すべての人がこれを見、人が遠くからこれをながめる。
26 見よ。神はいと高く、私たちには知ることができない。
その年の数も測り知ることができない。
27 神は水のしずくを引き上げ、それが神の霧となって雨をしたたらせる。
28 雨雲がこれを降らせ、人の上に豊かに注ぐ。
29 いったい、だれが雲の広がりと、その幕屋のとどろきとを悟りえよう。
30 見よ。神はご自分の光をその上にまき散らし、また、海の底をおおう。
31 神はこれらによって民をさばき、食物を豊かに与える。
32 神はいなずまを両手に包み、これに命じて的を打たせる。
33 その雷鳴は、神について告げ、家畜もまた、その起こることを告げる。

37章
1 これによって私の心はおののき、その所からとびのく。
2 しかと聞け。その御声の荒れ狂うのを。
その御口から出るとどろきを。
3 神はそのいなずまを全天の下、まっすぐに進ませる。
それを地の果て果てまでも。
4 そのあとでかみなりが鳴りとどろく。
神はそのいかめしい声で雷鳴をとどろかせ、その声の聞こえるときも、いなずまを引き止めない。
5 神は、御声で驚くほどに雷鳴をとどろかせ、私たちの知りえない大きな事をされる。
6 神は雪に向かって、地に降れ、と命じ、夕立に、激しい大雨に命じる。
7 神はすべての人の手を封じ込める。
神の造った人間が知るために。
8 獣は巣にもぐり、ほら穴にうずくまる。
9 つむじ風は天の室から吹き、寒さは北から来る。
10 神の息によって氷が張り、広い水が凍りつく。
11 神は濃い雲に水気を負わせ、雲が、そのいなずまをまき散らす。
12 これは神の指図によって巡り回り、命じられるままに世界の地の面で事を行う。
13 神がこれを起こさせるのは、懲らしめのため、あるいは、ご自身の地のため、あるいは、恵みを施すためである。

14 これに耳を傾けよ。ヨブ。
神の奇しいみわざを、じっと考えよ。
15 あなたは知っているか。
神がどのようにこれらに命じ、その雲にいなずまをひらめかせるかを。
16 あなたは濃い雲のつり合いを知っているか。
完全な知識を持つ方の不思議なみわざを。
17 また、南風で地がもだすとき、あなたの着物がいかに熱くなるかを。
18 あなたは、鋳た鏡のように堅い大空を
神とともに張り延ばすことができるのか。
19 神に何と言うべきかを私たちに教えよ。
やみのために、私たちはことばを並べることができない。
20 私が語りたいと、神にどうして伝えられようか。
人が尋ねるなら、必ず彼は滅ぼされる。
21 今、雨雲の中に輝いている光を
見ることはできない。
しかし、風が吹き去るとこれをきよめる。
22 北から黄金の輝きが現れ、神の回りには恐るべき尊厳がある。
23 私たちが見つけることのできない全能者は、力とさばきにすぐれた方。
義に富み、苦しめることをしない。
24 だから、人々は神を恐れなければならない。
神は心のこざかしい者を決して顧みない。

38章
1 主はあらしの中からヨブに答えて仰せられた。
2 知識もなく言い分を述べて、摂理を暗くするこの者はだれか。
3 さあ、あなたは勇士のように腰に帯を締めよ。
わたしはあなたに尋ねる。わたしに示せ。
4 わたしが地の基を定めたとき、あなたはどこにいたのか。
あなたに悟ることができるなら、告げてみよ。
5 あなたは知っているか。
だれがその大きさを定め、だれが測りなわをその上に張ったかを。
6 その台座は何の上にはめ込まれたか。
その隅の石はだれが据えたか。
7 そのとき、明けの星々が共に喜び歌い、神の子たちはみな喜び叫んだ。

8 海がふき出て、胎内から流れ出たとき、だれが戸でこれを閉じ込めたか。
9 そのとき、わたしは雲をその着物とし、黒雲をそのむつきとした。
10 わたしは、これをくぎって境を定め、かんぬきと戸を設けて、
11 言った。「ここまでは来てもよい。
しかし、これ以上はいけない。
あなたの高ぶる波はここでとどまれ」と。
12 あなたが生まれてこのかた、朝に対して命令を下し、暁に対してその所をさし示し、
13 これに地の果て果てをつかまえさせ、悪者をそこから振り落とさせたことがあるか。
14 地は刻印を押された粘土のように変わり、衣服のように色づけられる。
15 悪者からはその光が退けられ、振りかざす腕は折られる。

16 あなたは海の源まで行ったことがあるのか。
深い淵の奥底を歩き回ったことがあるのか。
17 死の門があなたに現れたことがあるのか。
あなたは死の陰の門を見たことがあるのか。
18 あなたは地の広さを見きわめたことがあるのか。
そのすべてを知っているなら、告げてみよ。
19 光の住む所に至る道はどこか。
やみのあるその場所はどこか。
20 あなたはわたしを
その国まで連れて行くというのか。
また、その家に至る通り道を見分けるというのか。
21 あなたが知っている……
そのとき、あなたが生まれ、あなたの日数が多い、といって。

22 あなたは雪の倉に入ったことがあるか。
雹の倉を見たことがあるか。
23 これらは苦難の時のために、いくさと戦いの日のために、わたしが押さえているのだ。
24 光が分かれる道はどこか。
東風が地の上で散り広がる道はどこか。
25 だれが、大水のために水路を通し、いなびかりのために道を開き、
26 人のいない地にも、人間のいない荒野にも、雨を降らせ、
27 荒れ果てた廃墟の地を満ち足らせ、それに若草を生やすのか。
28 雨に父があるか。露のしずくはだれが生んだか。
29 氷はだれの胎から生まれ出たか。
空の白い霜はだれが生んだか。
30 水は姿を変えて石のようになり、深い淵の面は凍る。

31 あなたはすばる座の鎖を
結びつけることができるか。
オリオン座の綱を解くことができるか。
32 あなたは十二宮をその時々にしたがって
引き出すことができるか。
牡牛座をその子の星とともに
導くことができるか。
33 あなたは天の法令を知っているか。
地にその法則を立てることができるか。
34 あなたの声を雲にまであげ、みなぎる水に
あなたをおおわせることができるか。
35 あなたはいなずまを向こうに行かせ、「私たちはここです」と
あなたに言わせることができるか。
36 だれが心のうちに知恵を置いたか。
だれが心の奥に悟りを与えたか。
37 だれが知恵をもって
雨雲を数えることができるか。
だれが天のかめを傾けることができるか。
38 ちりが溶け合ってかたまりとなり、土くれが堅く固まるとき。

39 あなたは雌獅子のために獲物を狩り、若い獅子の食欲を満たすことができるか。
40 それらがほら穴に伏し、茂みの中で待ち伏せしているときに。
41 烏の子が神に向かって鳴き叫び、食物がなくてさまようとき、烏にえさを備えるのはだれか。

39章
1 あなたは岩間の野やぎが子を産む時を
知っているか。
雌鹿が子を産むのを見守ったことがあるか。
2 あなたはこれらがはらんでいる月を
数えることができるか。
それらが子を産む時を知っているか。
3 それらは身をかがめて子を産み落とし、その胎児を放り出す。
4 その子らは強くなり、野原で大きくなると、出て行って、もとの所には帰らない。

5 だれが野ろばを解き放ったのか。
だれが野生のろばの綱をほどいたのか。
6 わたしは荒れた地をそれの家とし、不毛の地をその住みかとした。
7 それは町の騒ぎをあざ笑い、追い立てる者の叫び声を聞かない。
8 山岳地帯はその牧場、それは青い物を何でも捜す。

9 野牛は喜んであなたに仕え、あなたの飼葉おけのそばで夜を過ごすだろうか。
10 あなたはあぜみぞで
野牛に手綱をかけることができるか。
それが、あなたに従って
谷間を耕すだろうか。
11 その力が強いからといって、あなたはそれに拠り頼むだろうか。
また、あなたの働きをこれに任せるだろうか。
12 あなたはそれがあなたの穀物を持ち帰り、あなたの打ち場で、これを集めるとでも
信じているのか。

13 だちょうの翼は誇らしげにはばたく。
しかし、それらはこうのとりの羽と
羽毛であろうか。
14 だちょうは卵を土に置き去りにし、これを砂で暖めさせ、
15 足がそれをつぶすことも、野の獣がこれを踏みつけることも忘れている。
16 だちょうは自分の子を
自分のものでないかのように荒く扱い、その産みの苦しみが
むだになることも気にしない。
17 神がこれに知恵を忘れさせ、悟りをこれに授けなかったからだ。
18 それが高くとびはねるとき、馬とその乗り手をあざ笑う。

19 あなたが馬に力を与えるのか。
その首にたてがみをつけるのか。
20 あなたは、これをいなごのように、とびはねさせることができるか。
そのいかめしいいななきは恐ろしい。
21 馬は谷で前掻きをし、力を喜び、武器に立ち向かって出て行く。
22 それは恐れをあざ笑って、ひるまず、剣の前から退かない。
23 矢筒はその上でうなり、槍と投げ槍はきらめく。
24 それはいきりたって、地を駆け回り、角笛の音を聞いても信じない。
25 角笛が鳴るごとに、ヒヒーンといななき、遠くから戦いをかぎつけ、隊長の怒号と、ときの声を聞きつける。

26 あなたの悟りによってか。
たかが舞い上がり、南にその翼を広げるのは。
27 あなたの命令によってか。
鷲が高く上がり、その巣を高い所に作るのは。
28 それは岩に宿って住み、近寄りがたい切り立つ岩の上にいる。
29 そこから獲物をうかがい、その目は遠くまで見通す。
30 そのひなは血を吸い、殺されたものがある所に、それはいる。

40章
1 主はさらに、ヨブに答えて仰せられた。
2 非難する者が全能者と争おうとするのか。
神を責める者は、それを言いたててみよ。

3 ヨブは主に答えて言った。
4 ああ、私はつまらない者です。
あなたに何と口答えできましょう。
私はただ手を口に当てるばかりです。
5 一度、私は語りましたが、もう口答えしません。
二度と、私はくり返しません。

6 主はあらしの中からヨブに答えて仰せられた。
7 さあ、あなたは勇士のように腰に帯を締めよ。
わたしはあなたに尋ねる。わたしに示せ。
8 あなたはわたしのさばきを無効にするつもりか。
自分を義とするために、わたしを罪に定めるのか。
9 あなたには神のような腕があるのか。
神のような声で雷鳴をとどろき渡らせるのか。
10 さあ、誉れ、気高さで身を装い、尊厳と威光を身につけよ。
11 あなたの激しい怒りを吐き散らし、すべて高ぶる者を見て、これを低くせよ。
12 すべて高ぶる者を見て、これを押さえ、悪者どもを、その場で踏みにじれ。
13 彼らを共にちりの中に隠し、その顔を隠れた所につなぎとめよ。
14 そうすれば、わたしはあなたをたたえて言おう。
あなたの右の手があなたを救えると。

15 さあ、河馬を見よ。
これはあなたと並べてわたしが造ったもの、牛のように草を食らう。
16 見よ。その力は腰にあり、その強さは腹の筋にある。
17 尾は杉の木のように垂れ、ももの筋はからみ合っている。
18 骨は青銅の管、肋骨は鉄の棒のようだ。
19 これは神が造られた第一の獣、これを造られた方が、ご自分の剣でこれに近づく。
20 山々は、これのために産物をもたらし、野の獣もみな、そこで戯れる。
21 彼ははすの下、あるいは、葦の茂みや沼に横たわる。
22 はすはその陰で、これをおおい、川の柳はこれを囲む。
23 たとい川があふれても、それはあわてない。
その口にヨルダン川が注ぎ込んでも、動じない。
24 だれがその目をつかんでこれを捕らええようか。
だれがわなにかけて、その鼻を突き通すことができようか。

41章
1 あなたは釣り針で
レビヤタンを釣り上げることができるか。
輪繩でその舌を押さえつけることができるか。
2 あなたは葦をその鼻に通すことができるか。
鉤をそのあごに突き通すことができるか。
3 これがあなたに、しきりに哀願し、優しいことばで、あなたに語りかけるだろうか。
4 これがあなたと契約を結び、あなたはこれを捕らえて
いつまでも奴隷とすることができようか。
5 あなたは鳥と戯れるようにこれと戯れ、あなたの娘たちのために
これをつなぐことができるか。
6 漁師仲間はこれを売りに出し、商人たちの間でこれを分けるだろうか。
7 あなたはもりでその皮を、やすでその頭を十分に突くことができようか。
8 その上にあなたの手を置いてみよ。
その戦いを思い出して、二度と手を出すな。
9 見よ。その望みは裏切られる。
それを見ただけで投げ倒されるではないか。
10 これを起こすほどの狂った者はいない。

だから、だれがいったい、わたしの前に立つことができよう。
11 だれがわたしにささげたのか、わたしが報いなければならないほどに。
天の下にあるものはみな、わたしのものだ。
12 わたしは彼のおしゃべりと、雄弁と、美辞麗句に黙っていることはできない。

13 だれがその外套をはぎ取ることができるか。
だれがその胸当ての折り目の間に、入れるか。
14 だれがその顔の戸をあけることができるか。
その歯の回りは恐ろしい。
15 その背は並んだ盾、封印したように堅く閉じている。
16 一つ一つぴったりついて、風もその間を通らない。
17 互いにくっつき合い、堅くついて離せない。
18 そのくしゃみはいなずまを放ち、その目は暁のまぶたのようだ。
19 その口からは、たいまつが燃え出し、火花を散らす。
20 その鼻からは煙が出て、煮え立つかまや、燃える葦のようだ。
21 その息は炭火をおこし、その口から炎が出る。
22 その首には力が宿り、その前には恐れが踊る。
23 その肉のひだはくっつき合い、その身にしっかりついて、動かない。
24 その心臓は石のように堅く、臼の下石のように堅い。
25 それが起き上がると、力ある者もおじけづき、ぎょっとしてとまどう。
26 それを剣で襲っても、ききめがなく、槍も投げ槍も矢じりもききめがない。
27 それは鉄をわらのように、青銅を腐った木のようにみなす。
28 矢もそれを逃げさせることができず、石投げの石も、それにはわらのようになる。
29 こん棒をもわらのようにみなし、投げ槍のうなる音をあざ笑う。
30 その下腹は鋭い土器のかけら、それは打穀機のように泥の上に身を伸ばす。
31 それは深みをかまのように沸き立たせ、海を香油をかき混ぜるなべのようにする。
32 その通ったあとは輝き、深い淵は白髪のように思われる。
33 地の上には、これと似たものはなく、恐れを知らないものとして造られた。
34 それは、すべて高いものを見おろし、それは、すべての誇り高い獣の王である。

42章
1 ヨブは主に答えて言った。
2 あなたには、すべてができること、あなたは、どんな計画も成し遂げられることを、私は知りました。
3 知識もなくて、摂理をおおい隠す者は、だれか。
まことに、私は、自分で悟りえないことを告げました。
自分でも知りえない不思議を。
4 さあ聞け。わたしが語る。
わたしがあなたに尋ねる。わたしに示せ。
5 私はあなたのうわさを耳で聞いていました。
しかし、今、この目であなたを見ました。
6 それで私は自分をさげすみ、ちりと灰の中で悔いています。

7 さて、主がこれらのことばをヨブに語られて後、主はテマン人エリファズに仰せられた。「わたしの怒りはあなたとあなたのふたりの友に向かって燃える。それは、あなたがたがわたしについて真実を語らず、わたしのしもべヨブのようではなかったからだ。
8 今、あなたがたは雄牛七頭、雄羊七頭を取って、わたしのしもべヨブのところに行き、あなたがたのために全焼のいけにえをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈ろう。わたしは彼を受け入れるので、わたしはあなたがたの恥辱となることはしない。あなたがたはわたしについて真実を語らず、わたしのしもべヨブのようではなかったが。」
9 テマン人エリファズと、シュアハ人ビルダデと、ナアマ人ツォファルが行って、主の彼らに命じたようにすると、主はヨブの祈りを受け入れられた。
10 ヨブがその友人たちのために祈ったとき、主はヨブの繁栄を元どおりにされた。主はヨブの所有物もすべて二倍に増された。
11 こうして彼のすべての兄弟、すべての姉妹、それに以前のすべての知人は、彼のところに来て、彼の家で彼とともに食事をした。そして彼をいたわり、主が彼の上にもたらしたすべてのわざわいについて、彼を慰めた。彼らはめいめい一ケシタと金の輪一つずつを彼に与えた。
12 主はヨブの前の半生よりあとの半生をもっと祝福された。それで彼は羊一万四千頭、らくだ六千頭、牛一千くびき、雌ろば一千頭を持つことになった。
13 また、息子七人、娘三人を持った。
14 彼はその第一の娘をエミマ、第二の娘をケツィア、第三の娘をケレン・ハプクと名づけた。
15 ヨブの娘たちほど美しい女はこの国のどこにもいなかった。彼らの父は、彼女たちにも、その兄弟たちの間に相続地を与えた。
16 この後ヨブは百四十年生き、自分の子と、その子の子たちを四代目まで見た。
17 こうしてヨブは老年を迎え、長寿を全うして死んだ。